Research Abstract |
小児期あるいは成人の慢性腎炎におけるIgA腎症の占める割合は高い.これまでIgA腎症患者血清IgAの一部はフィブロネクチンに結合し,複合体を形成されていることが示されてきた.この複合体がIgA腎症の発症,進展にどのように関連しているのかを知るために以下の検討を加えた. 典型的IgA患者血清(I)を用いて,実験系の確認を行なった.IgAーフィブロネクチン複合体の検出系は,簡単には,変性collagenIで処理したマイクロタイタ-プレ-トに患者血清あるいは検体を加え,一定時間孵置した後,結合したIgAーフィブロネクチン複合体を,アルカリフォスファタ-ゼ標識抗ヒトIgA抗体と反応させ,吸光度405nmで測定した.血清(I)は,原血清を1x,10x,20x,40x,80x,100x,200xの希釈を行なったものと,1mlをゲラチンセファロ-スにより,IgAーフィブロネクチン複合体をアフィニティ-処理し,エリュ-ションを行なったものについて測定系に加えた.吸光度最大値をみると,前者では10x希釈血清で吸光度0.14,後者ではエリュ-ション液1xで0.23と,アフィニティ-処理により,より多くのIgAーフィブロネクチン複合体を検出できる可能性が示唆された.数例の希釈血清を用いた検討では10ー20x希釈が最も高い吸光度が得られたので,以後のスクリ-ニングに際しては,20x希釈血清を用いて測定した.アルカリフォスタ-ゼ標識抗ヒトIgA抗体による発色のための孵置時間を60分に設定すると,尿所見正常健常者の平均±SD=0.367±0.092(OD405)であり,この上限以上を示したものは,42例中11例であった.これらの症例における臨床的差異は明らかではなかった.今後の課題として,この測定で正常範囲内とされた症例各々について,アフィニティ-処理を行ない測定値の変化をみること,陽性者におけるさらに詳細な臨床的検討を行なう予定である.また当初の計画に添って,フィブロネクチン結合IgAを分離精製し,その免疫学的,生化学的分析を行ない,これらが培養ラットメサンギウム細胞増殖に与える影響について検討する.
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