1990 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト 赤芽球の増殖・分化の位相差顕微鏡映画による研究
Project/Area Number |
02670458
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
古川 利温 獨協医科大学, 医学部, 教授 (70049154)
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Keywords | )congenital dyserythropoietic anemia / 赤芽球 / 位相差顕微鏡映画 / 世代時間 |
Research Abstract |
ヒト臍帯血およびcongenital dyserythropoietic anemia(CDA) type III患児末梢血に由来する赤芽球を、新しく考案した細胞伸展装置で伸展した状態で5〜7日培養し、この間の細胞の増殖、分化を位相差顕微鏡映画撮影およびSoret band filterを用いた顕微鏡撮影を併用して観察、記録した。 1.ヒト臍帯血からの赤芽球:1つの前赤芽球と推測される芽球から3回の分裂を経て、8個の正赤芽球が生成されるのが観察された。細胞の大きさは、分裂を経るに従って小さくなり、その運動は激しくなり、Hb濃度は上昇した。最後の分裂の前の赤芽球の世代時間は、29.66±5.73時間で、その前の世代の赤芽球の世代時間は22.34±5.45時間で、両者の差は0.1%以下の危険率で有意であった。 2.CDA type IIIの赤芽球:未熟芽球から3〜6回の分裂を経て、正赤芽球が生成され、その一部にin vivoでみられるのと同様の核異常が見られた。一部の正赤芽球の脱核が観察された。最後の分裂の2回前の分裂をする芽球と、それより前の世代の芽球は、前赤芽球の特徴である1個の巨大な核小体を持つという点では類似していた。最後の分裂の前の赤芽球の世代時間は28.88±5.44時間、さらに1つ前の赤芽球の世代時間は20.54±2.31時間で、両者の差は0.1%以下の危険率で有意であったが、臍帯血からの赤芽球ついての、それぞれ該当する世代時間との間には有意差はなった。まれには3極分裂・再融合による3核細胞の形成が観察されたが、CDA type IIIにみられる核異常は、主として最後の分裂後に顕化した。これらのことは、核DNA計測やラジオオ-トラフィ-フなどから推測されていたが、この研究によって、はじめて直接に観察されたものである。この成果は第32回日本小児血液学会のシンポジウム(平成2年9月7日)で発表した。
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