1991 Fiscal Year Annual Research Report
ドパミン作動薬の反復投与による脳ドパミンとりこみ機構の持続性変化
Project/Area Number |
02670508
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 光源 東北大学, 医学部, 教授 (70033321)
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Keywords | 覚醒剤精神病 / 分裂病モデル / 逆耐性現象 / ドパミン再取り込み部位 / 覚醒アミン / ラット / 脳内動態 / 線条体 |
Research Abstract |
メタンフェタミン(MAP)を慢性投与した逆耐性形成動物は、覚醒剤精神病の急性期病像再燃の神経機構を究明する実験モデルとされている。逆耐性動物にMAPを再投与すると、ドパミン(DA)系神経終末からのDA放出が著増し、それが異常行動再現の基盤をなすと考えられているが、DA過剰遊離を起こす神経終末の変化の詳細は不明である。この逆耐性の神経機構を解明するのが本研究の目的である。昨年度は、MAP逆耐性動物における^<14>CーMAPの脳内動態の検討を行い、その結果神経終末膜のMAP取り込み機構の変化が異常行動再現の原因をなすという新たな仮説を可能とした。一方、MAP逆耐性動物ではコカイン再投与でも容易に異常行動を起こし(交叉逆耐性)、それがシナプス間隙内DA過剰状態に起因することが知られている。そこで今年度は、MAP逆耐性動物を用い、コカイン誘導体の^3HーWIN35428の脳内動態を検討した。その結果、コカインを再投与したMAP逆耐性動物の線条体及び小脳でDifferential absorptionratio(DAR)の有意な減少を認めた。コカインはDA再取り込みを特異的に遮断してDA過剰状態を生じるので、線条体におけるDAR減少は、MAP逆耐性によりDA再取り込み部位が少量のコカインで占拠されて容易にDA過剰とそれによる異常行動を再現するものと考えられた。また小脳でDARが減少していたことから、逆耐性形成に伴う脳内変化がドパミン系だけではなく広汎な脳部位に及ぶものであることが示唆された。以上、異常行動再現時には前シナプス神経終末膜のMAPとDAの取り込み機構における持続性の変化が密接に関係することを明らかにした。今後は逆耐性動物にMAPやコカインを再投与する前の神経終末の変化の検討や、逆耐性形成に伴う脳内変化部位をさらに詳細に特定するためにオ-トラジオグラフィ-を用いた検討を行う予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Sato,M.: "Relapse of paranoid psychotic state in methamphetamine psychosis parallels recurrence of schizophrenic episodes." Schizophrenia Bulletin. 18. (1992)
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[Publications] Sato,M.: "A lasting vulnerability to psychosis in patients with previous methamphetamine psychosis." Annals of The New York Academy of Sciences. (1992)
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[Publications] Numachi,Y.: "Alterations in biodistribution of ^<11>Cーmethamphetamine (MAP),^<14>CーMAP,and ^<123>IーNーisopropylーiodoamphetamine (IMP) in MAPーand cocaineーsensitized animals." Annals of The New York Academy of Sciences. (1992)
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[Publications] 佐藤 光源: "分裂病症状の発現・再現にかかわる脳の脆弱性ー薬物精神病からのアプロ-チ" 神経精神薬理. 13. 85-89 (1991)
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[Publications] 佐藤 光源: "精神分裂病の発症脆弱性" 臨床精神病理. 12. 185-195 (1991)
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[Publications] 佐藤 光源: "精神分裂病の医療モデル概念" 精神医学. 33. 338-339 (1991)
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[Publications] 佐藤 光源(分担): "薬物の乱用と依存" 放送大学教育振興会, 11 (1991)
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[Publications] 沼知 陽太郎(分担): "神経伝達物質updateー基礎から臨床まで" 中外医学社, 10 (1991)