老年痴呆における神経回路網の変性及び再生に関する基礎的研究

1991 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 02670524
• Research Institution: Juntendo University School of Medicine
• Principal Investigator: 飯塚 禮二 順天堂大学, 医学部, 教授 (00052952)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 岩本 典彦 順天堂大学, 医学部, 助手 (60211067) ; 新井 平伊 順天堂大学, 医学部, 講師 (50167988)
• Keywords: 神経成長因子(NGF) / 脳移植 / AchE陽性ニュ-ロン / 体重変化 / 摂食量 / NGF定量 / 雌雄差

Research Abstract

昨年度我々は、若年成熟ラットの側脳室に胎仔の前脳基底部を移植して更に神経成長因子(NGF)を持続投与する事により、移植ニュ-ロンの生着や成長に対するNGFの作用を検討した。しかしその後、ニュ-ロンに対するNGFの影響はNGFの濃度により一様でないと考えられた為、NGF濃度20ug/mlの実験群を加えNGF群を濃度100ug/ml群と20ug/mlの2種類として、濃度によるNGFの効果を比較検討することとなった。その結果、移植組織のAChE陽性ニュ-ロンの大きさは、NGF20ug/ml投与群(総量3.36ug)で対照群より有意に大きく、NGF100ug/ml(総量16.8ug)群では小さい値を示した。このことから、移植組織のAChE陽性ニュ-ロンの成長をNGFが促進すること、さらにNGFは用量依存的にニュ-ロンの成長を促進するのではなく、成長促進に適当なNGFの濃度範囲が存在する可能性が示唆された。次に昨年度我々は、上記実験中NGF投与群では対照群に比べて有意に体重増加が抑制されることを認めた。そこで、NGFによる体重増加の抑制作用が摂徴行動の抑制として関連して生じるのが研究した。NG投与期間における体重変化と一日あたりの摂食量を経時的に測出した結果、この現象はNGF投与初期から発現していたが、NGF投与群と対照群の摂食量に有意差は認められなかった。成熟動物におけるこのような現象は報告されておらず、NGFの全身作用の一つとして今後解析する必要がある。第三に、ラットの各脳部位におけるNGF量を高感度酵素免疫測定法により定量し、成熟期(生後3〜4カ月齢)と老齢期(24カ月齢)、および雌雄差を比較検討した。その結果、成熟ラットに比べて老齢ラットでは雌雄とも前頭葉と海馬でNGF量の有意な低下が認められ、とりわけ海馬では雄より雌での低下が著しいことが明らかとなった。

Research Products

• [Publications] 江渡 江,新井 康允,飯塚 禮二: "痴呆治療法としての神経細胞移植の可能性" 老年精神医学雑誌. 2(7). 869-874 (1991)
• [Publications] 江渡 江,長岡 重之,飯塚 禮二: "臨床からみた神経栄養因子ー脳移植との関連ー" CLINICAL NEUROSCIENCE. 9(12). 68-70 (1991)
• [Publications] Nishizuka,M.,Eto,K.,Arai,Y.,Iizuka,R.,et al: "Ageーand SexーRelated Difference in the Nerve Growth Factor Distribution in the Rat Brain." Brain Research Bulletin. 27. 685-688 (1991)
• [Publications] 渡江 江: "胎仔ラット前脳基底部のコリン系ニュ-ロンの脳室内移植におけるNGF投与の影響" 順天堂医学. 37(4).
• [Publications] 江渡 江: "NGFによる体重抑制ーNGF脳室内投与によるラット体重増加の抑制ー" 順天堂医学. 38(1).