1990 Fiscal Year Annual Research Report
神経芽腫細胞におけるNーmycと細胞分化がMDRー1遺伝子の発現に及ぼす影響
Project/Area Number |
02670552
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
財前 善雄 九州大学, 医学部, 助手 (50221289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水田 祥代 九州大学, 医学部, 教授 (30038856)
中川原 章 九州大学, 医学部, 助教授 (50117181)
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Keywords | 神経芽腫 / Nーmyc / mdrー1 / 分化 |
Research Abstract |
神経芽腫において、Nーmyc癌遺伝子の増幅が認められる場合は極めて予後不良で、容易に薬剤耐性と獲得し再発してくる。そこで、Nーmyc遺伝子の増幅の有無と発現の程度、さらに多剤耐性遺伝子であるmdrー1の発現の程度との関係について検討した。 当科に保存している新鮮凍結標本35例についてNーmycの増幅と発現及びmdrー1の発現について測定した。DNAはBlinとStaffordの方法によって、RNAはMoniatis等のguanidinium/hot phenol法によって抽出した。Nーmycのcopy数の測定にはSouthern blot法を用い、ヒト胎盤DNAをsingle copyのコントロ-ルとした。RNAはDot blot法にて分析し、BーアクチンによってNーmycとmdrー1の発現を標準化した。 mdrー1の発現は35例中32例(91%)にみられ、Nーmycの発現も29例中25例(86%)にみられた。Nーmycの増幅している場合は同遺伝子の発現の程度も高かった。病期III IVの進合例ではNーmycの発現は高いが、逆にmdrー1の発現は低くなった。このようにNーmycの発現とmdrー1発現には逆相関関係がみられた。また組織学的分化度に関しても同様の関係がみられた。即ち、未分化な神経芽腫はNーmycの発現が高く、mdrー1の発現は低い。このような傾向は、特に1才以下で顕著である。次に原発巣との関係でみると、Nーmycの増幅は副腎原発のものに特異的にみられる。さらに、Nーmycとmdrー1の発現は、副腎原発のものでよくみられるものの、その程度は様々である。しかし、副腎以外の原発のものではNーmycは発現が弱く、mdrー1の発現が強くなる。初発時と再発時の2回測定できた例では、Nーmycとmdrー1の発現はほとんど変化がなかった。また、再発時、組織学的により未熟な形になったものでは、むしろmdrー1の発現は減少していた。以上より神経芽腫において、mdrー1の発現の程度は薬剤耐性よりもむしろ神経芽腫細胞の細胞分化と密接な関係があると考えられた。
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Research Products
(1 results)