1990 Fiscal Year Annual Research Report
肝炎,肝癌自然発症LECラットの肝細胞増殖機構の制御に関する研究
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02670559
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宇根 良衛 北海道大学, 医学部附属病院, 講師 (60176716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武市 紀年 北海道大学, 医学部, 助教授 (40002133)
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Keywords | LECラット / 肝炎 / 肝癌 / 増殖因子 / Wilson病 |
Research Abstract |
12週令LECラットに70%肝部分切除を施行した後、肝の湿重量および肝への^3HーTdR取り込みを経時的に調べると、これらはいずれも正常LEAラットに比べて統計学的に有意に低下していた。さらに、LECラットから肝細胞を分離、初代培養し、上清にEGF、TGFαとTGFβを添加して、DNAへの^3HーTdR取り込みを調べた。これらの増殖因子に対する感受性は、4週令LECラットでは保たれていたが、12と32週令のラットでは有意に低下した。しかし、長期生存LECラットの自然発生肝癌細胞を初代培養し、EGFに対する感受性を調べると、周囲の非癌部肝細胞より高い傾向にあった。以上の結果は、LECラット肝細胞の増殖刺激に対する感受性が低下していることをin vivoとin vitroの両方から示している。この増殖性の低下は、肝再生を妨げ、LECラットの肝炎の劇症化をもたらすと同時に、長期生存の個体において増殖因子高感受性の前癌細胞が出現した時、これを選択的に増殖させる一因となることが示唆された。 LECラットの肝細胞を分離する際、肝臓を潅流すると緑色を呈することから異常物質が蓄積している可能性を考え、肝組織の銅、亜鉛濃度を測定した。その結果、LECラットの肝の銅濃度は、2日令でLEAラットの3倍、肝炎発症直前の3カ月令では50倍以上、8カ月令では40倍以上の高値を示した。またLECラットの血清ceruloplasminと血清銅濃度は3と8カ月令で著明な低値を示した。これらから我々はLECラットの肝炎とヒトWilson病との類似性をはじめて指摘し、LECラット肝炎の原因が銅代謝異常にあることを明らかにした。
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[Publications] 李 宇,宇根 良衛,他: "肝炎,肝癌自然発症LECラットにおける肝への銅蓄積ーウイルソン病の動物モデルー" 医学のあゆみ.
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[Publications] 富樫 裕二,宇根 良衛,他: "遺伝性肝炎高発LECラットにおける銅キレ-ト剤dーpenicillamlneの治療効果" 医学のあゆみ.
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[Publications] Lee Yu,Y.Une,et al.: "Spontaneous hepatic copper accmulation in LongーEvans Cinnamon rats with hereditary hepatitis:a model of Wilson's disease" Journal Clinical Investigation.
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[Publications] Lee Yu,Y.Une,et al.: "Abnormal copper accmulation in nonーcancerous and cancerous liver tissue of LEC rats developing hereditary hepatitis and spotaneous hepatoma" Japanese Journal of Cancer Research.