1990 Fiscal Year Annual Research Report
癌細腔における転移能獲得と染色体変化の関連についての研究
Project/Area Number |
02670568
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
鈴木 力 新潟大学, 医学部附属病院, 助手 (40183420)
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Keywords | 癌細胞 / 癌転移 / DNAヘテロ化 / ミニサテライトDNA / Pcー1,Pcー2 |
Research Abstract |
癌細胞が転移能を獲得していく過程は発生した癌細胞が種々の異なった性質を持つヘテロな細胞集団を形成する過程を含むと考えられ、後にその中から適当な細胞クロ-ンが選択され、転移巣を作ると考えられている。このプログレッションの過程には様々な染色体変化、すなわち染色体の脱落、倍数性の変化、DNA変異、メチル化の変化などのDNAヘテロ化が起こることが知られており、ミニサテライトDNA領域もその標的となっている可能性が十分にある。本研究はミニサテライトDNAヘテロ化と癌細胞の転移能獲得との関連を検討するものである。初年度はまずミニサテライトプロ-ブのもつ特徴、性格を検討する必要があると認めたため、DNAミニサテライトプロ-ブであるPcー1、Pcー2(新大:木南)に関する基礎的実験を行った。実験はC3H/HeとDBA/2の交配、およびオス親とメス親を逆にした交配でF1マウス101匹を得た後、組織からDNAを抽出し、これらのプロ-ブを用いたサザンブロット解析を行った。生殖細胞系ではPcー1で13.8%、Pcー2で5.4%の変異が認められた。これらの変異は両親の性、ミニサテライトの繰り返し数の差には依存していなかった。また、Pcー1で体細胞変異(モザイク)が4例検出された。以上の結果から、ミニサテライトの変異を検出できるPcー1、Pcー2プロ-ブを用いるサザンブロット解析は、一方では癌細胞が転移能を獲得する段階でのDNAの変化を鋭敏、かつ容易に検出できる方法となりうることを確信した。次年度以降は当初計画のマウスを使った転移実験を行い、高転移クロ-ンの癌細胞におけるDNA変異の実態についての検討を行うとともに、ミニサテライトDNAの変化が転移能獲得におけるDNA変異に本質的なものか、DNA変異と転移能とが直接に関係するものであるかなどについても検討する予定である。
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