Research Abstract |
1.赤外線吸収スペクトル,X線回析による結晶形の解明…(1)炭酸カルシウム胆石32例についてみると,カルサイト(方解石)が20例62.5%,アラゴナイト(あられ石)が29例,90.6%,バテライト(不安定形)が9例28.1%であった。自然界では,安定形のカルサイトが断然優位なのに比し,特異的であった。しかも,自然界にはほとんどみられないバテライトを含むこれら3種の同質多像形を同時に含有している極めて稀なものも3例あった。(2)黒色石16例についてみると,肝硬変合併群の4例では全例カルサイトであり,非合併群では12例中9例,75%がアラゴナイトであり,バテライトは同群中に含まれていなかった。(3)膵石4例中の炭酸カルシウムは,カルトサイトが3例の主成分を占めていた。このように,胆石(炭酸カルシウム胆石,黒色石),膵石中の炭酸カルシウムの結晶形はかなりちがっており,生成条件のちがいが示唆された。 2.示差熱分析による結晶形転移温度の測定…温泉石灰華(アラゴナイト)の転移温度は約400℃で,鉱物アラゴナイトのそれより低いが,タニシ殻等生物界由来のものは更に低く,炭酸カルシウム胆石のそれでは明らかなピ-クが見出されなかった。3.微量金属成分,有機成分…炭酸カルシウム胆石(17例)についてみると,有機物は平均17.5%含まれており,アラゴナイ形群にマグネシウム分が低い傾向にあった。膵石群でも同様にアラゴナイト群においてマグネシウムが低かった。4.アラゴナイト結晶生成に影響を及ぼす因子の検討…マグネシウム,ストロンチウム,バリウムの各イオンの混入,生成速度,温度,PH,炭酸ガスの存在などが考えられるが,現段階では上記有機物の混入が有優力因子と考えられた。
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