1990 Fiscal Year Annual Research Report
胸部大動脈瘤手術における安全性の検討 ー特に皮質脊髄誘発電位を用いてー
Project/Area Number |
02670610
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
数井 暉久 札幌医科大学, 医学部第二外科, 講師 (20094203)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 修 札幌医科大学, 医学部第二外科, 助手 (80175661)
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Keywords | 皮質脊髄誘発電位 / corticospinal direct response (CDR) / 伝導性脊髄誘発電位(ESCP) / 超低体温下循環停止法 / 脳循環停止許容時間 |
Research Abstract |
対象として、雑種成犬30頭を用いた。皮質脊髄誘発電位Corticospinal direct response (COR)は大脳皮質運動領野を硬膜外より、伝導性脊髄誘発電位(ESCP)は頚部にて脊髄を硬膜外より刺激して、それぞれ腰部より挿入した双極型カテ-テル電極にて硬膜外より導出した。 体外循環下に直腸温15℃まで冷却し、以下の3群に分けた。 I群循環停止30分(10頭)、II群循環停止60分(10頭)、III群循環停止90分(10頭)である。脳機能はCDRの第1陰性電位(N_1)を、脊髄機能はESCPの第1、第2陰性電位(N_1、N_2)をモニタリングした。 冷却中は、潜時は徐々に延長していった。振幅は冷却の初期に一時的に増大したが、その後は温度の低下とともにその振幅は低下していった。また、冷却中の変化は3群間で有意差は認められなかった。循環停止中、CDRはI群の2例を除き、また、ESCPは1群の5例を除き、電位が消失した。加温期、CDRはI群、II群とも全例回復を認めたが、III群では、加温しても1例は電位の回復が認められず、残り9例も直腸温19.6±2.8℃で回復したが、うち5例は再び消失する二次抑制が認められ、最終的には4例のみが回復し、その振幅は23.0±35.6%と他の2群との間に有意差を認めた。ESCPは3群とも正常まで回復した。 病理組織学的所見では、III群の大脳皮質運動領野にのみ神経細胞の核および原形質の萎縮と染色性の変化、Nissl小体の消失、凝固濃縮(shrinkage)などの虚血性変化を認めた。脊髄では明らかな虚血性変化を認めなかった。 これらのことより、復温時、CDRの回復過程を経時的にモニタリングすることは、循環再開後の脳障害を予測する上で有効な手段であると考えられた。今回のCDRとESCPを用いた検討では、直腸温15℃における脳循環停止時間は60分が安全限界であり、脊髄に対する低温保護効果は90分かそれ以上維持されるものと考えられた。
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Research Products
(1 results)