Research Abstract |
初年度は,正常胸腺上皮細胞の細胞学的検討および血液幹細胞(骨髄細胞)について研究を行った。 1:胸腺上皮細胞のprimary cultureについて検討した。各年令のいろいろな疾患で胸腺を採取し,胸腺上皮細胞を培養した。胸腺上皮細胞は1週めから2週めまでによく増殖し,5週から6週までには脱落して線維芽細胞がtull sheetとなった。 2:培養胸腺上皮細胞の免疫組織学的染色を行い検討した。培養胸腺上皮を,Keratinとvimentinを用いて免疫組織学的染色を行った。敷石状配列をしたものや,密に接触して増殖するものではkeratinを示し,上皮性性格を呈していた。 3:secondary cultureにおける胸腺上皮細胞の増殖能を検討した。胸腺上皮細胞では一度減少した後,しばらくあまり増加してこない時期がみられた。胸腺採取個体の年令によって,胎児,乳児を1群,10才までを2群,19才までを3群,20才以降を4群とし,各群の培養3日4日における初期細胞数に対する生細胞率をみると,1群は3群と4群に対して有意に生細胞率が高く,2群も3群と4群に対して有意に生細胞率が高かった。 4:胸腺上皮細胞培養上清が示す,骨髄細胞のリンパ球系・赤芽球系・顆粒球系・芽球系への分化の誘導能について検討した。4群では,リンパ球系,顆粒球系への分化が1,2,3群に比して有意に少なく,赤芽球系への分化では有意に多かった。リンパ球系細胞のCD4,CD8,CD3誘導では,CD4-8-3+のsubsetは4群が1,2,3群に比して有意に少なく,CD4+8-3+のsubsetは,4群が2,3群に比して有意に少なかった。またCD4-8-3-の,胸腺細胞としては非常に未熟なsubsetと考えられるものでは,4群が1,2,3群に比して有意に多かった。
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