1990 Fiscal Year Annual Research Report
パ-キンソン病に対する神経組織の脳内移植による治療
Project/Area Number |
02670637
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
板倉 徹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40100995)
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Keywords | パ-キンソン病 / 神経移植 / 組織蛍光法 / 交感神経節 |
Research Abstract |
本年度は10頭のサルにMPTPを投与し実験的パ-キンソン病を作製して移植による効果を検討した。MPTP(0.1mg/kg)の静脈内投与をくり返し総量が1〜3mg/kgに達するとサルは筋固縮無動を中心としたパ-キンソン徴候を示した。この時点で7頭のサルに交感神経節を尾状核に自家移植した。1頭のサルには神経節の代りに筋肉片を尾状核に移植し、2頭のサルには移植せず対照群とした。移植前後の運動量の変化を我々の考案したテレメトリ-法で数値化し、移植片の生着はカテコラミン組織蛍光法にて観察した。神経節の移植を受けたサル7頭中6頭は移植後1〜2週目から運動量が増加し、筋固縮も減退した。移植後4週で運動量は正常化し筋固縮も消褪した。しかし、7頭中1頭のサルは移植後一過性の改善を示したがその後再び悪化し強いパ-キンソン徴候を示した。移植を受けなかったサルや、筋肉片の移植を受けたサルは症状の改善を示さなかった。カテコラミン組織蛍光法による移植部の観察では症状の改善を示したサル脳内で神経細胞は生着し多数の線維を脳内に送っていた。この脳内への伸長線維は末梢性カテコラミン線維の特長を失ない、細くて小さなvaricosityを有する中枢性カテコラミン線維へと変化していた。神経節の移植にもかかわらず症状の改善を示さなかったサルでは移植片が脳梁近傍で観察された。また筋肉片の移植を受けたサル尾状核では宿主脳カテコラミン線維の再生発芽は観察されなかった。 以上の結果から実験的パ-キンソン病に対し自家交感神経節の脳内移植が有効であることが示された。今後、神経節移植による症状改善の機序を生化学的側面から検討する予定である。なお本年度の結果は国際学会(Neural Regulation and Transplantation Singapore)、日本神経学会総会、日本脳神経外科学会総会、神経再生変性移植研究会において発表した。発表論文は別紙の通りである。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Nakai M,Itakura T,Kawei I,Nakai K,Naka Y,Iwai H,Komai N: "Autologous transplantation of the superior cervical ganglion into the brain of parkinsonian monkeys" J Neurosurg. 72. 91-95 (1990)
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[Publications] Nakai M,Itakura T,Komai N: "Transplantation of autologous superior cervical genglion into the brain of parkinsonian monkeys" Stereotact Funct Neurosurg. 54+55. 337-341 (1990)
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[Publications] 大岩 美嗣 板倉 徹 駒井 則彦: "交感神経節の脳内移植と軸索誘導(総説)" 脳神経. 43. 1-9 (1991)
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[Publications] 中井 三量,板倉 徹,杜 建新,駒井 則彦: "上頚神経節の脳への移植" 生体の科学. 42. 75-80 (1991)
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[Publications] Itakura T,Nakai M,Komai N: "Alzheimer's and Parkinson's diseases II:Basic and therapeutic strategies" Plenum, (1991)
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[Publications] 板倉 徹: "神経伝達物質と臨床" 中外医学社, (1991)