1992 Fiscal Year Annual Research Report
骨軟部腫瘍の転移メカニズム-matrix metalloprotinaseの観点より-
Project/Area Number |
02670671
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
小宮 節郎 久留米大学, 医学部整形外科, 講師 (30178371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 三四郎 久留米大学, 医学部整形外科, 助手
平岡 弘二 久留米大学, 医学部整形外科, 助手
南谷 和仁 久留米大学, 医学部整形外科, 助手 (80248434)
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Keywords | 肺転移 / 骨腫瘍 / 軟部腫瘍 / 基底膜 / コラーゲン分解能 / 破骨細胞 / 骨吸収活性 |
Research Abstract |
肺転移を形成するまでの間にはいくつかのプロセスが必要である。その初期の過程では、まづ固形腫瘍から個々の腫瘍細胞が遊離して血管基底膜へ侵入しなければならない。血管基底膜はタイプIVコラーゲン、ラミニン等から成り、腫瘍がこの膜を通過するにはこれらの膜成分を変性させ小孔を形成しなければならない。一方、膜成分を変性・消化させるものとしてはメタロプロティナーゼ(matrix metalloproteinase,以下MMP)が知られている。我々は骨軟部腫瘍のMMP活性を調べ、肺転移能との関係で検討を加えた。方法論として培養細胞を用いるため、先づ培養細胞株の樹立に努めた。その結果、4種の骨肉腫、2種の軟骨肉腫、4種の転移性骨腫瘍(癌)、4種の悪性線維性組織球腫、3種類の骨巨細胞腫について細胞株を樹立することができた。無血清培地下の各培養細胞にMMP産生刺激剤としてのインターロイキン1(以下IL-1)を加え、その培地を採取して電気泳動に流し、トランスファー後、抗MMP抗体を作用させ、その後発色させてバンドの色調により活性度を検討した。その結果、肺転移能の高い細胞株は多数バンドのゼラチナーゼ活性を有していた。また細胞は培養環境を変えることでもその形質発現に大きな影響を与えるため、タイプIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、ゼラチン等をコーティングした培養中で同様の実験を行うと、特にゼラチン下で大きな活性を増幅してみることができた。骨腫瘍組織中には破骨細胞の存在をかなりの頻度で認める。我々は、破骨細胞様の多核巨細胞を腫瘍細胞のconditioned mediumを用いて実験的に作製し、組織化学的検索からこの細胞がIL-1を産生することが示された。従って以下のように考えている。腫瘍細胞は破骨細胞の形成をもたらし、この破骨細胞はIL-1の産生にて腫瘍細胞のMMP活性を高め、その結果局所の骨破壊や肺転移が進展する。
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[Publications] 小宮 節郎: "軟骨肉腫の骨破壊能について" 中部日本整形外科災害外科学会雑誌. 33. 2420-2422 (1990)
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[Publications] 小宮 節郎: "骨巨細胞腫(GCT)のインターロイキン-1産生能について" 中部日本整形外科災害外科学会雑誌. 33. 913-915 (1990)
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[Publications] 南谷 和仁: "骨吸収モデルとしての骨巨細胞腫単核細胞のPGE2の産生能について" 整形外科と災害外科. 38. 1152-1154 (1990)
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[Publications] 南谷 和仁: "骨肉腫細胞のコラゲナーゼ産生能について" 整形外科と災害外科. 39. 590-593 (1990)
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[Publications] 南谷 和仁: "ヒト転移性腎癌の培養細胞樹立株において" 整形外科と災害外科. 39. 1699-1702 (1990)
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[Publications] 南谷 和仁: "横紋筋肉腫の培養細胞樹立株とそのゲラチナーゼ活性について" 中部日本整形外科災害外科学会雑誌. 34. 565-567 (1991)
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[Publications] 南谷 和仁: "培養骨肉腫細胞のmatrix metalloproteinase(MMP)活性と培養条件によるその変動について" 整形外科と災害外科. 41. 519-522 (1992)
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[Publications] Setsuro Komiya: "The pathogenesis and etiology of giant cell tumor of bone from a viewpoint of bone resorptive factors" Nippon Seikeigeka Gakkai Zasshi. 66. 485-492 (1992)
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[Publications] Setsuro Komiya Kazuhito Minamitani: "Simple bone cyst Treatment by trepanation and studies on bone resorptive factor in cyst fluid with a theory of it's pathogenesis" Clin.Orthop.287. 204-211 (1993)
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[Publications] Setsuro Komiya Kazuhito Minamitani: "Cementation in the treatment of giant cell tumor of bone" Arch Orthop Trauma Surg.(1993)
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[Publications] Setsuro Komiya: "Aggressive bone tumorous lesion in infancy -Osteofibrous dysplasia of the tiba and fibula." J.Ped Orthop.