1992 Fiscal Year Annual Research Report
ヘパリン加工膜型人工肺に関する基礎的並びに臨床的研究
Project/Area Number |
02670687
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
兒玉 謙次 九州大学, 医学部, 助教授 (20136451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 成輔 九州大学, 医学部, 教授 (30038723)
谷山 卓郎 九州大学, 医学部, 講師 (70117167)
赤田 隆 九州大学, 医学部, 助手
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Keywords | Heparin Surface / Biomaterial / 抗血栓性素材 / 膜型人工肺 / 体外循環 / 開心術 / Heparin / Protamine |
Research Abstract |
新しい抗血栓性素材であるHeparin Surfaceの有用性は明らかであるが、Heparin Surface膜型人工肺の臨床応用については、現状では安全のためHeparinを全身投与する必要がある。その際、体外循環離脱時にHeparinを中和し出血傾向を是正するためにProtamineを投与するが、中和時の低血圧、肺高血圧、血小板減少などの多彩な副作用の発生が問題となっている。低血圧の発生機構はいまだ十分に解明されていないため、我々はHeparin Surfaceの臨床応用をより安全に遂行するためにProtamineの血管平滑筋並びに血管内皮に及ぼす効果について等尺性張力測定法を用いて検討した。 その結果、ProtamineはHeparin非存在下で血管平滑筋や内皮機能に対して抑制作用を有するが、Heparin-Protamine複合体はそのような有害作用を有しないことが判明した。Protamineは、EDRF放出、平滑筋細胞内へのCa^<2+>流入ならびに細胞内Ca^<2+>貯蔵部位よりのCa^<2+>放出の抑制により血管拡張作用を発揮することが示唆された。また、Heparinを用いた実験からProtamineの抑制作用はその強い陽性荷電に起因すること、Protamineは平滑筋細胞内に入ることなく血管平滑筋に対する直接抑制作用を発揮することが示唆された。 Heparin中和時、血中には“free"のProtamineも存在すること、また、内皮正常標本でのProtamineの血管平滑筋抑制作用や内皮機能抑制作用はHeparinによって“reverse"できないことを考慮し、以下のような結論を得た。1)Protamineの血管拡張作用が、Heparin中和時の低血圧の発生に一部関与している可能性がある。2)Protamineは必要最小限の量を緩徐に投与することが望ましい。 今後、Heparin投与を必要としないより安全で有用なHeparin Surface膜型人工肺の臨床応用の確立を目指したいと考えている。
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