1990 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌性尿路性器感染症の発症における線毛の臓器特異性
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02670708
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
公文 裕巳 岡山大学, 医学部, 助教授 (30144760)
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Keywords | 大腸菌 / 尿路感染症 / 線毛 / 病原性因子 |
Research Abstract |
単純性尿路性器感染症由来大腸菌株、すなわち、急性単純性膀胱炎由来183株、急性単純性賢盂腎炎由来47株、急性細菌性前立腺炎由来59株の血球凝集能を再検討した結果、これらの株の80ー90%はマンノ-ス感受性の血球凝集(MS+)を示し、60ー70%が同時にマンノ-ス非感受性の血球凝集(MR+)示す株であった。しかも、これらのMS+・MR+株の大多数はregulated phase variantsであり、培養環境の変化でいずれか一方の凝集活性を有意に発現した。血球凝集能を線毛が媒介していることは各種マンノ-スならびにα(1ー4)Gal,Gal糖鎖を結合させたラテックス粒子を用いた凝集反応とその凝集像の走査型電子顕微鏡的観察により明らかとなった。また、グロボシド封入リポソ-ムならびにα(1ー4)Gal,Gal糖鎖結合ラテックスを用い、前述の単純性尿路性器感染症由来株におけるP線毛保有株の頻度を再検討した結果、P線毛保有株の頻度は腎盂腎炎由来株で有意に高く、特に小児の腎盂腎炎株では60%がP線毛保有株となっていた。このことは、P線毛が腎盂腎炎の発症における臓器特異性を有する線毛(病原性因子)であることはほぼ間違いのない事実であり、実際の尿路での発現様式の解析が最も重要な課題であると考えられた。なお、前立腺炎由来株におけるP線毛保有株の頻度は約20%に過ぎず、他のMR線毛、特に、S線毛の臓器特異性の検討が必要であると考えられた。これら線毛の発現様式の解析に、ネガティブ染色を用いた透過型電子顕微鏡が有用であろうと考えられたが、電子顕微鏡的にはMR線毛もType I線毛も直径約7nmの直線的線毛であり、超微形態学的には識別不能であった。従って、個々の線毛の発現様式の解析には、電子顕微鏡用の糖鎖プロ-ブの開発が必要であり、現在、糖鎖結合金コロイドの作製を行っているので、次年度以降本格的に検討していく予定である。
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Research Products
(1 results)