1990 Fiscal Year Annual Research Report
前庭機能廃絶後における体平衡機能回復のメカニズムに関する実験的研究
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02670764
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 衛 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (80116607)
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Keywords | 前庭神経 / ウシガエル / 前庭神経切断 / 神経再生 / 傾斜姿勢 / 体平衡障害 / 中枢性代償 / ゲンタマイシン |
Research Abstract |
ウシガエルを用いて一側前庭神経切断後の体平衡、運動能の変化を経時的に追跡した。神経切断後、動物は約30゚その側へ傾斜する。この傾斜は次第に減少し、約7週で正常に復した。この時点ですでに切断神経は再生癒合し、また卵形嚢などの前庭器感覚細胞も正常の形態を保っていた。さらに感覚細胞を機械的内リンパ流動で刺激すると神経癒合部を経由する良好な活動電位が記録された。このことより、前庭神経は切断後も再生能力が旺盛で、これが中枢の代償機構と共に体平衡の回復に関与しているものと考えられた。さらに、残存した感覚細胞が臨床的にしばしば経験される神経切断後のめまいの再発を惹起しているものと考えられた。前庭神経を両側で切断した際は、傾斜姿勢はみられなかった。但し、一側切断部に骨片を挿入して神経の再生を阻害した場合は、除々にその側への傾斜姿勢が出現した。これは反対側で神経の再生が生じ、体平衡のバランスが崩れたためと考えられ、やはり姿勢の回復に関与する神経再生の重要性を示唆するものと考えられた。ゲンタシンなどのアミノ配糖体系抗生物質の内耳毒性の重要性についてはよく知られている。今回ゲンタシンを内耳内に注入して惹起される感覚細胞と体平衡の障害について検索した。薬剤注入後、種々の程度の形態学的変化が観察された。この変化は注入後の時間経過に伴って高度となった。一方、形態的変化に応じて体平衡の障害が出現した。とくに卵形嚢障害の際は、その側への傾斜姿勢が現われ、垂直半規管の障害では頭部の安定性や跳躍能が障害された。これらの変化も時間の経過に伴って増悪した。内耳毒性薬剤のように前庭感覚細胞を恒久的に障害し、その機能回復の見込みがない場合は姿勢の回復はきわめて遅延した。以上より、前庭神経ならびに感覚細胞は、神経切断後も再生力が高く、このことが、中枢性の代償機能とともに平衡能回復の重要な要素となることが証明された。
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[Publications] 鈴木 衛: "前庭神経切断後の体平衡回復のメカニズムについて" Equilibrium Research.
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[Publications] Mamoru Suzuki: "Effect of Gentamicin intoxication in frog behavior." Acta Otolaryngologica.
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[Publications] Mamoru Suzuki: "Recovery mechanism of postural distrubance after vestibular neurectomy." ORL.