1991 Fiscal Year Annual Research Report
前庭機能廃絶後における体平衡機能回復のメカニズムに関する実験的研究
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02670764
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
鈴木 衞 広島大学, 医学部・附属病院, 講師 (80116607)
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Keywords | 卵形嚢 / 前庭神経切断 / 姿勢・運動能 / 傾斜姿勢 / 中枢性代償 / 末梢前庭受容器 / 活動電位 / 走査電顕 |
Research Abstract |
カエルを用いて前庭神経切断後の姿勢・運動能の変化を検索し、あわせて切断神経、末梢前庭器の形態学的、生理学的検討を行った。上前庭神経切断後、動物は直ちに切断側への傾斜姿勢をしめした。この傾斜姿勢は次第に減少し、3ー9週で正常の頭位に戻った。この時点では、切断した前庭神経はよく再生しており、前庭受容器も形態学的、生理学的に正常であった。したがって、このような感覚上皮の残存と神経の再生が前庭機能障害後の障害体平衡回復の重要なメカニズムとなっていることが推察された。また、神経の再生と中枢性の代償とがどのように関わって体平衡の回復に寄与するかについて検討するために、以下の2種類の実験を行った。第1の実験では、右側神経切断後の頭部傾斜が0゚となった後、同側の神経を再度切断して姿勢の変化を観察した。第2の実験では、右側神経切断後姿勢が回復した直後に反対側(左側)の神経切断を行った。第1の同側神経の再切断実験では、2回目の神経切断後の傾斜角度は初回のそれよりも少なかった。さらに2回目の神経切断後の姿勢回復に要する期間も初回より短かった。これは、初回の神経切断によってすでに中枢性の代姿が充分に達成されており、その結果2回目の神経切断後の傾斜が少なく、また中枢代償が成立する過程が省略された分だけ回復期間も短くなったものと考えられた。姿勢回復後に反対側の神経切断を行った場合は、2回目の切断後の傾斜角は初回のそれより大となった。これは、右側切断後この側で中枢代償が成立しており、しかも末梢受容器機能も回復したためと考えられる。すなわち、左側切断後は右側の中枢代償分だけ左右の前庭不均衡が大となり、左側へのより大きな傾斜が現れたのではないかと考えた。今回の実験から、前庭機能障害後の姿勢の変化には中枢性の代償機構と末梢前庭の機能とがともにメカニズムとして働いていることが明らかとなった。
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