1990 Fiscal Year Annual Research Report
摂食様式の異なる魚類における顎筋の筋線維構成と生化学的性質に関する系統的研究
Project/Area Number |
02670813
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
前田 憲彦 広島大学, 歯学部, 教授 (60049418)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西森 利数 広島大学, 歯学部, 助手 (20112211)
|
Keywords | Oncorhynchus masou / 閉顎筋 / 開顎筋 / Lactate dehydrogenase(LDH)活性 / アイソザイムパタ-ン |
Research Abstract |
咀嚼筋の機能に関する系統学的研究の一還として、本年度は硬骨魚類のなかでも古い形質を持つサケ科魚類に属するOncorhynchus masou(O.masou)の閉顎筋と開顎筋におけるLactate dehydrogenase(LDH)活性とアイソザイムパタ-ンと体長との関連性について検討を加えた。O.masouのパ-タイプは、河川の上流域の狭い環境下で比較的定着した生活様式を持ち、水流が30cm/sec以上の部分で主に流下性の水棲昆虫を食べているが、パ-タイプの変態型であるスモルトタイプは河川の上流部から、より環境が広く水流の隠やかな中流域に下り、流下性の昆虫のみならず、他種の小型魚を追いかけて補食することが、行動学的観察と胃の内容物の調査でも明らかにされた。ただし、パ-タイプでも比較的体長の大きい個体では魚食性があることが確かめられた。このような両者の間において摂餌行動の違いとLDH活性とそのアイリザイムパタ-ンとの関連性について検討したところ以下のようなことが明らかになった。1.異なる体長を持つパ-タイプ個体間では閉顎筋と開顎筋とにおいてLDH活性の顕著な差は観察されなかったが、閉顎筋において、最も十側に移動したB型のアイソザイムの占める割合が体長に比例して増加した。しかし、開顎筋においてはそのような変化は観察されなかった。2.体長の大きいスモルトタイプの個体における閉顎筋ではB型のアイソザイムがパ-タイプの小型個体に比較して3倍位近く増加していた。しかし、開顎筋においてはパ-タイプと比較して有意な増加は認められなかった。以上のようなパ-タイプの個体の閉顎筋における体長に比例したB型アイソザイムの占める割合の増加と、スモルト化した個体における同様の増加は、O.masouの成長の各ステ-ジにおける摂餌環境と食性の変化に対する機能的適応を示唆するものである。
|