1990 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌における腫瘍関連抗原発現の解析と臨床応用に関する研究
Project/Area Number |
02670898
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
辻 龍雄 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (70144954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 功典 岩手医科大学, 医学部, 教授 (80116722)
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Keywords | 免疫組織化学 / cーerbBー2遺伝子産物 / KMー93抗体 |
Research Abstract |
当科入院中の扁平上皮癌患者および唾液腺腫瘍患者の血清中における抗ヒト肺腺癌抗体KM93反応抗原量を測定したところ、唾液腺腫瘍患者において、統計的に有意に高値を示すことが明らかとなり、唾液腺腫瘍の血清腫瘍マ-カ-としての有用性を報告した。 当科で治療した多数例の扁平上皮癌および唾液腺腫瘍のフォルマリン固定パラフィン切片で、ポリクロナ-ル抗ヒトcーerbBー2抗体を用いて免疫組織化学的に染色した。その反応性並びに抗原の存在様式から推察すると、cーerbBー2遺伝子産物は、口腔外科領域の扁平上皮癌では、免疫組織化学的には存在しないことが推察された.次に唾液腺腫瘍では、悪性腫瘍だけでなく良性腫瘍や正常唾液腺にも反応した。正常組織では唾液腺導管上皮細胞に強い反応性を示した。良性の多形性腺腫では、その細胞質と反応し、実質性の増殖を示す腫瘍部分よりも散在性に増殖している腫瘍細胞に反応していた。悪性腫瘍では、腺様嚢胞癌の中でも分化度の高いとされる腺管形成型に反応し、2層腺管構造の管腔側細胞層に強く反応した。粘表皮癌では、高分化型のグル-プI型で反応した。しかし、唾液腺癌では反応せず、腺房細胞由来とされる明細胞癌や腺房細胞癌では反応しなかった。以上のことから、唾液腺腫瘍では、cーenbBー2遺伝子産物は、唾液腺腫瘍の悪性度とは関連しておらず,むしろ、唾液腺態管上皮由来の腫瘍に反応しており、しかも、分化度が高いとされる腫瘍に多く検出されることから、唾液腺導管細胞もしくは滝液腺導管由来細胞の分化に関連していることが示唆された。
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[Publications] 田垣内 幸士,辻 龍雄,木村 由香,佐々木 功典,鈴木 通彦,篠崎 文彦: "多形性腺腫におけるcーerbBー2癌遺伝子産物の発現" 癌の臨床. 37(2). (1991)
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[Publications] 辻 龍雄,佐々木 功典,村上 知之,田垣内 幸士,木村 由香,篠崎 文彦: "モノクロナ-ル抗ヒト肺腺癌抗体KMー93の唾液腺腫瘍マ-カ-としての応用" 癌の臨床. 37(5). (1991)
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[Publications] 辻 龍雄,田垣内 幸士,木村 由香,佐々木 功典,篠崎 文彦: "口腔腫瘍におけるcーerbBー2遺伝子産物の発現" 日本口腔外科学会雑誌.
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[Publications] 辻 龍雄,田垣内 幸士,木村 由香,佐々木 功典,篠崎 文彦: "cーerbBー2遺伝子産物と細胞分化" 日本癌治療学会誌.
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[Publications] T.Tsuji,K.Tagaito,K.Sasaki,F.Shinozaki: "cーerbBー2 proto oncogene protein and its correlation with cell differentiation." Anticancer Research.