Research Abstract |
Jcl:ICR系純系マウスを用いた.FO(9週齢)交配時から,高蛋白高脂肪食群:粗蛋白29%,粗脂肪8%(H群),低蛋白低脂肪食群:粗蛋白12%,粗脂肪4%(L群),コントロ-ル群:粗蛋白20%,粗脂肪6%(C群)に分けた。F1は哺乳期間を3週間とした。4週齢で親と分離飼育し,5週齢で屠殺した。H3では,交換哺乳をH群とL群の一部(N:20)について2〜3週齢目に行った。 マウスの体重増加は,H群(N:31),L群(N:25),C群(N:32)でそれぞれ,1週齢:6.24,5.40,5.87,3週齢:12.11,8.25,10.46,5週齢:23.36,14.17,18.98gであり,実験期間を通じて常にH群が最も増加量が大きく,L群が小さかった。歯の大きさの計測には,徴小計測機(精度1/1000mm)を用いた。下顎臼歯の歯冠モデュラス(歯の長径+幅径/2)は,H群,L群,C群でそれぞれ,M1:1.85,1.81,1.80,M2:1.41,1.34,1.42,M3:0.88,0.75,0.83であった(計測誤差:0.021mm)。雌雄差は認められなかった。群間の平均値の差の検定(t検定,5%有意)結果から,M1:H群>C群〓L群,M2:H群〓C群>L群,M3:H群>C群>L群であった(歯の長径でH群はL群より約2%大きい)。歯は歯胚の石灰化開始期にその成長がスパ-トする(Ooeら,1963)。マウスの歯の石灰化開始時期は,M1が胎生期,M2が出産直後(約2日目),M3は約10日目であることから,高蛋白高脂肪食は,子宮内環境にまで影響を及ぼすこと,低蛋白低脂肪食は,母乳を通じての母体効果として影響すること,離乳後の蛋白と脂肪の摂取量の差は,直接,その個体の形成期歯胚の成長に影響を及ぼすことが示唆された。また,F3においてH群とL群の一部で交換哺乳を行った結果,M3の大きさがH群,L群で逆転したことから,歯の大きさが栄養という環境要因の影響を受けることが確かめられた。
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