1990 Fiscal Year Annual Research Report
フッ素イオン取り込みにおけるエナメル質結晶CO_3^<3ー>の挙動
Project/Area Number |
02670928
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
宮澤 忠蔵 奥羽大学, 歯学部, 助教授 (70083441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 みどり 奥羽大学, 歯学部, 助手 (30168182)
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Keywords | エナメル質 / フッ素イオン / 炭酸イオン / 炭酸ラジカル |
Research Abstract |
CO_3^<2ー>はヒト歯エナメル質結晶に2.0〜3.7%含有され、エナメル質の石灰化や溶解性に深く関与し、齲蝕感受性を高める因子の1つであると考えられている。一方、エナメル性中のF^ーは、CO_3^<2ー>とは対照的に強い抗齲蝕性を示すことから、フッ化物の臨床応用が広く行われている。しかし、フッ素の取り込みに伴うエナメル質結晶中のCO_3^<2ー>の挙動はほとんど明らかにされていない。そこで、エナメル質に放射線照射を行うと結晶中のCO_3^<2ー>がCO_3^<3ー>ラジカルを形成することに着目し、このCO_3^<3ー>をESR(電子スピン共鳴)信号として追跡することで、F_ーの取り込みとCO_3^<3ー>の挙動との関連性を解析した。エナメル質に^<60>COγ線を照射すると照射量に対し、CO_3^<3ー>ラジカルの信号は対数的増加を示すが、ヒト永久歯エナメル質では、約5×10^6Rの照射でほぼ最高値に達した。ここでは、約10^4Rの照射を行い、100ppmF^ーで6か月間作用後のCO_3^<2ー>濃度とF^ーの取り込み量を測定した。エナメル質中のCO_3^<2ー>をConwayの微量拡散法で測定したところ、F^ー作用前で2.84%、2か月から6か月作用後で2.61%〜2.5%にまで減少し、作用前に対する減少率は8.1%〜12%であった。一方、ESRによる信号強度の推移でも作用前に比較して11.2%〜14.7%の減少率を示し、CO_3^<2ー>濃度の減少とよく近似した。エナメル質のF^ー取り込みは、作用期間に伴って顕著な増加が観察され、6か月間の作用で約3000ppmに達した。対照としてCO_3^<2ー>を含まない合成HAp(旭光学)に同条件下でF^ーを作用させたが、F^ーの取り込みはほとんど認められなかった。これらのことから、エナメル質のF^ー取り込みには、結晶中に存在するCO_3^<2ー>の濃度ならびに同イオンの挙動が強く関わっているものと考えられた。現在大量照射(10^4〜10^7R)したエナメル質に500〜1000ppmF^ーを1年間作用させたときのF^ーの取り込みとCO_3^<2ー>およびCO_3^<3ー>の挙動を精査し、これらのイオンの相関関係の解析を進めている。
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[Publications] 窪田 明久,宮澤 忠蔵,清水 秋雄: "エナメル質のフッ素イオン取り込みと結晶内CO_3^<2ー>の挙動" 口腔衛生学会雑誌. 40(4). 446-447 (1990)
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[Publications] Midori IWASAKI,Chyuzo MIYAZAWA,Tatsuya SHIMANO: "Relation Between the Weight of Human Tooth Enamel and the CO_3^<3ー> Signal Intensity on the ESR Dosimetry" Ohu University Dental Journal. 17(2). 95-100 (1990)