1990 Fiscal Year Annual Research Report
βーアドレナリン受容体の高低二つの親和性結合部位の性質についての研究
Project/Area Number |
02671015
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小池 勝夫 東邦大学, 薬学部, 助教授 (70147578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新海 美智子 東邦大学, 薬学部, 助手 (60206315)
高柳 一成 東邦大学, 薬学部, 教授 (70012599)
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Keywords | βーアドレナリン受容体 / 部分活性薬 / 光学異性体 / 活性作用 / 拮抗作用 / 高親和性結合部位 / 低親和性結合部位 / モルモット盲腸組 |
Research Abstract |
βーアドレナリン作動性部分活性薬の光学異性体を用いて,それらが,βーアドレナリン受容体の高低二つの異なる親和性結合部位へ対してどの様な選択性を持つかを検討した。βーアドレナリン作動性部分活性薬としてはカルテオロ-ル及びベフノロ-ルを用いた。これら薬物のS(-)体,R(+)体及びRS(±)体は,いずれも濃度依存的にモルモット盲腸組を弛緩させ,活性作用を示した。また,これら薬物は,イソプレナリンによる用量作用曲線を右方へ平行移動させ,拮抗作用を示した。これらのことは,用いた光学異性体はいずれもβーアドレナリン部分活性薬(ISAをもったβーアドレナリン遮断薬)として作用することを示している。カルテオロ-ル及びベフノロ-ルのS(-)体,R(+)体及びRS(±)体のいずれにおいてもpA_2値とpD_2値の間には有意な差が観察され,このことは,既に報告したβーアドレナリン受容体には二つの異なる作用部位(高親和性結合部位と低親和性結合部位)があり,部分活性薬はこれらと相互作用して拮抗作用と活性作用を引き起こすという考えを支持している。また,イソプレナリンへ対するpA_2値は,S(-)体の方がR(+)体より有意に大きく,pD_2値は,両者の間に差がなかった。内活性についてもS(-)体とR(+)体の間に大きな違いはなかった。これらのことはβーアドレナリン受容体の高親和性結合部位は光学異体を識別するのに対し,低親和性結合部位は識別しないことを示している。更に,光化学的親和標識法を用いて,部分活性薬による活性作用(低親和性結合部位を介した反応)より解離定数を求めたところ,S(-)体とR(+)体の間に大きな違いがみられず,このことは,低親和性結合部位が光学異性体を識別しないという機械的反応より得られた結果を支持している。以上のことより,βーアドレナリン受容体の高親和性結合部位は光学異性体を識別できるのに対し,低親和性結合部位は識別できないことが明らかとなった。
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