1992 Fiscal Year Annual Research Report
ハーダー腺由来細胞成長因子、増殖阻害因子によるハーダー腺の分化の調節機構
Project/Area Number |
02680127
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
加納 和孝 東京大学, 医学部(医), 助手 (70111507)
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Keywords | ハーダー腺 / ハーダー腺由来細胞成長因子 / 細胞増殖阻害因子 / 神経前駆細胞 / 角膜実質細胞 / 脂質代謝 / 1-アルオn 2.3-ジアシルグリセロール |
Research Abstract |
ハーダー腺は、げっ歯類をはじめ種々の動物の眼球後部に位置し、光受容体、フェロモン分泌、サーカディアンリズムの調節、分泌脂質による潤滑作用等が言われており、解剖学、動物行動学の分野を中心に研究がなされてきたが、未だ不明の部分も多い。これまでの研究でモルモットハーダー腺由来の細胞成長因子を見いだし精製を行い、いくつかの性質を明らかにした。この因子は、従来知られている細胞成長因子の中では線維芽細胞成長因子(FGF)と類似性が認められるが、アミノ酸組成がFGFと全く異なることおよびFGF要求性の細胞の増殖を促進しないことから、FGFとも異なる新しいタイプの細胞成長因子である。本研究でははモルモット角膜の増殖に本因子がかかわっていること、角膜実質細胞に本因子に対する受容体があることを示した。本因子はハーダー腺に存在する他の因子と共同してハーダー腺組織及び角膜の細胞を分化した一定の状態に維持する上で共同的に重要な役割を担っていると考えられる。本研究ではまた、このモルモットハーダー腺の細胞成長因子のクローニングを行い現在までにその一部のcDNAを得ることに成功した。全長の配列を明らかにする為の実験を現在行っている。また細胞成長因子がハーダー腺の分化に果たす影響を解析するためにハーダー腺の性質を維持した細胞を培養する方法の確立をめざし相当程度の成功をおさめた。この培養細胞はハーダー腺由来細胞成長因子をはじめ種々の成長因子、レクチンに反応し、その代謝、形態等が変化する。このことは脂質合成細胞の分化を研究する非常に良い系であると考えられる。ハーダー腺に存在する細胞増殖阻害因子については現在アッセイ系を作製中である。最近、本因子が培養ラット胎児外胚葉性神経前駆細胞の神経突起の伸張を著しく促進することを見いだし詳しい解析を行っている。
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[Publications] S.H.Park,K.Kano,Y.Seyama: "Synthesis of alkyldiacylglycerol in cultured guinea pig Harderian gland cells." Endocrinologia. 38. 273-274 (1991)
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[Publications] Y.Yokoyama,K.Kano,K.Shirama,K.Kaji,H.Namiki,Y.Seyama: "Effect of Harderian gland growth factor on the growth of cornea stromal cells" Cornea. 11. 380-385 (1992)
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[Publications] 横山 嘉子、加納 和孝、加治 和彦、脊山 洋右、: "ハーダー腺由来細胞成長因子" 細胞工学. 19. 915-920 (1990)
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[Publications] Y.Seyama,S.H.Park,T.Kasama E.Yasugi,K.Kano: "Hardrian Glands" S.M.Webb et al.eds; Springer-Verlag, 352 (1992)
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[Publications] 横山 嘉子、加納 和孝: "細胞成長因子Part 3" 日本組織培養学会編 朝倉書店, (1993)