1990 Fiscal Year Annual Research Report
保存プロリン残基が蛋白質の構造・機能・安定性に果す役割
Project/Area Number |
02680134
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
油谷 克英 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教授 (90089889)
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Keywords | プロリン / トリプトファン合成酵素 / カロリメトリ- / 蛋白質の変性 / 蛋白質の構造形成 / 変異蛋白質 |
Research Abstract |
本研究ではトリプトファン合成酵素αサブユニットのプロリン変異型を用いて、αサブユニットの安定性、立体構造形成、及び機能発現に占めるプロリン残基の役割を明らすにすることである。今年度明らかにできたことは、1)アラニンはヘリックス形成能の高い残基そしてプロリンはヘリックス破壊残基として知られているが、本結果は、ル-プ上に存在するプロリン残基が、ヘリックス構造の安定化に寄与していることを示した。2)プロリンは変性状態のエントロピ-を減少させることによって、蛋白質の安定化に寄与しているとされているが、本結果は、それを支持していない。プロリンからアラニン変異型のなかには変性のエントロピ-を減少したものもあった。これらの結果を詳細に検討した結果、未変性状態でのプロリン残基が局在する構造上の特微と深く関係していることが分かった。つまり、未変性状態でのプロリン残基の揺らぎと関係し、揺らぎの低い部位に位置するプロリン残基は構造の安定化に寄与するが、揺らぎの高い部位でのプロリン残基は安定化にほとんど寄与しない。その安定化への寄与は揺らぎの程度に比例することが分かった。3)βサブユニットとの接触部位にあるプロリン残基は、αとβサブユニットとの複合体形成による両サブユニット独自の触媒機能の増幅に重要な役割を果たしていることが分かった。αとβサブユニットとの結合反応のカロリメトリ-(等温滴定型カロリメタ-OMEGAを用いて)によって、両サブユニット接触面での変異型(P132A)は、結合のエンタルピ-と結合定数が野生型に比べ著しく低下しているが、△Cpはほとんど変化しなかった。このことは、両サブユニット間の結合反応は疎水性相互作用によるよりもイオン性相互作用に寄っていることを示している。
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[Publications] Sugisaki,Y.,Ogasahara,K.,Miles,E.W., & Yutani,K.: "Scanning Calorimetric study of Tryptophan Synthase αーSubunit from E.coli,S.typhimurium and an Interspecies Hybrid" Thermochimica Acta. 163. 117-122 (1990)
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[Publications] Yutani,K.,Hayashi,S.,Sugisaki,Y.,& Ogasahara,K.: "Role of Conserved Proline Residues in Stabilizing Tryptophan Synthse αーSubunit:Analysis by Mutants with Alanine or Glycine" PROTEINS Structure,Function,and Genetics. 9. 90-98 (1991)
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[Publications] Go,M.,Tomoda,T.,Honda,M.,& Yutani,K.: "Domain and Module Structure in α/β Barrel of Tryptophan Synthase α Subunit" PROTEINS Structure,Function,and Genetics.
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[Publications] 小笠原 京子,油谷 克英: "トリプトファン合成酵素の構造と機能" 蛋白質核酸酵素. 35. 201-211 (1990)
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[Publications] Yutani,K.& Ogasahara,K.(Edited by Hatano,M.): "Protein Structural Analysis,Folding and Design" JapanScientific Societies Press Elsevier, 237 (1990)
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[Publications] 油谷 克英(分担執筆): "新生化学実験講座第1巻タンパク質III高次構造" 東京化学同人(日本生化学会編), 436 (1990)