Research Abstract |
今年度は,本研究(3年計画)の初年度であり,当初計画に沿って主に南九州各地(鹿児島県鹿児島市・国分市・鹿屋市・阿久根市,宮崎県宮崎市・都城市,熊本県人吉市・八代市など)でシラス(入戸火砕流堆積物)台地の地形,台地上に分布する二次シラスおよびそれを覆う火山灰層などについて,概要把握のための野外調査を行った。 二次シラスについては,野外における判定基準として,(1)成層した薄層で構成されること,(2)斜層理がしばしば見出されること,(3)軽石片が水磨されていることなどが多くの場合に有効であることがこれまでの調査で明らかになった。しかし,一部(例えば人吉盆地)には,二次シラスか否か判定が困難な成層シラスも存在するので,さらに検討を要する。また,二次シラスには,生成機構あるいは生成環境の差異から,(1)河川(の流水)によるもの,(2)湖成のもの,(3)布状洪水によるものなどが考えられるが,これらの性状や判定基準などについてはまだ十分な資料が得られていないので,今後,整備を進めたい。 火山灰層については,各地の火山灰層の数および厚さの概要は把握できた。しかし,各々の火山灰層の噴出源については,まだ不明のものもあり,今後さらに調査を続けたい。なお,最下位の火山灰層(ロ-ム層)の堆積年代は,二次シラスやシラス台地の生成時期および生成過程などを知る上で特に重要であるので,現在,年代測定依頼中である。 シラスの分布に関して,九州山地内各地をはじめ,噴出源の姶良カルデラから70Km以上も離れた幾つかの場所で,シラスの局所的な分布地が新たに見出された。これは,入戸火砕流が当初,従来知られていたよりもはるかに広域に堆積したこと,およびその後,大半の堆積物が侵食・除去されたことを意味し,火砕流の流動機構ならびに火砕流堆積後の開析過程を考える上で,極めて重要な新知見と言える。
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