1991 Fiscal Year Annual Research Report
ゾウリムシの生物時計機構におけるエネルギ-伝達系・情報伝達系間相互作用の解析
Project/Area Number |
02680223
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
長谷川 建治 北里大学, 医学部, 講師 (80050558)
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Keywords | 生物時計 / ゾウリムシ / 原始視覚系 / エネルギ-変換系 / 情報伝達系 / cAMP / cGMP / PKC |
Research Abstract |
1.従来使用してきたゾウリムシは、行動の概日リズムを示すが接合には概日リズムを示さない劣性株(acycler)で、加齢が進みリズムのcoherenceが悪くなっている。今後の分子生物学的研究のための適性材料を再評価するため、接合にも概日リズムを示す優勢株(cycler)の行動の概日リズムの性質を調べた。cyclerの行動のリズムは、acyclerのそれと比較すると、リズムのcoherenceが良く、恒暗状態で自由継続リズムを長く記録できる、等の利点を持つこと、また自由継続リズムの周期(T)が短いという特徴を持つこと、を発見した。cyclerのリズムのcoherenceが良いことは、cyclerが生化学的研究材料として優れていると言える。また両株の_Tが異なることは、生物時計の分子機構を比較生理学的に研究するための優れた材料を提供すると言える。 2.そのcyclerを使って、光情報伝達系に関与すると思われるopsin蛋白、cGMP、cAMP、PKCの概日変化、及び2時間の光刺激に対する応答を調べた: (1)opsinの分子量は5.5kbで、その濃度は概日変化を示さない、 (2)cGMPは、日の出直後一過的な変動を示した後日中ゆっくり増大し、日没後一過的な変動を示した後、ゆっくり減少した。cAMPは、日の出・日没直後ー過的な変化を示したが、他の時間帯ではあまり変動を示さない、 (3)PKCは、日中濃度が高く、夜間低いものと思われる。恒暗でのも基本的には同じ性質を示した。2時間の光刺激に対する応答から、cAMP・cGMP・PKCの順に活性が高くなることが確かめられた。 3.ゾウリムシ・ミトコンドリアの明暗サイクル及び恒暗条件下での形態変化を調べた。日中まん丸な形態を示すミトコンドリアが多く、夜間は色々な形態をしたもの、中には分裂中のものも多い。またクリスタ構造も夜間はっきり見られる。形態からの所見では、日中盛んにATP合成を行っており、夜間はrestの状態であるものと思われる。
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[Publications] Hasegawa.K.,A.Tanakadate.M.Shimamoto,& I.Nakada: "Comparison of circadian behavioural rhythms in rhythmic and arhythmic alleles in mating type reversals in Paramecium multimicronucleatum." J.Exp.Biol.(1992)
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[Publications] Hasegawa,K.,A.Tanakadate.M.Shimamoto,& Y.Takahara: "The Paramecium ciradian clock:roles of cAMP and cGMP on photic signal transduction for the circadian clock system." Experientia. (1992)
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[Publications] 長谷川 建治: "生物物理学的機構ーゾウリムシ" 時間生物学ハンドブック(千葉 喜彦,高橋 清久編). 172-180 (1991)
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[Publications] 田中舘 明博,長谷川 建治,富岡 憲治,正木 忠勝,千葉 喜彦,蒲澤 良男,相良 嘉一,: "研究法" 時間生物学ハンドブック(千葉 喜彦,高橋 清久編). 504-519 (1991)