1990 Fiscal Year Annual Research Report
チトクロ-ムP450camにおける酸素ポケットの構造と機能の相関の解明ーアミノ酸置換による機能変換の解析ー
Project/Area Number |
02680224
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
島田 秀夫 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80095611)
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Keywords | チトクロ-ムPー450 / 一原子酸素添加酵素 / 水酸化反応 / 部位特異的変異法 / アミノ酸置換 / 酸素 / スレオニン / カンフア- |
Research Abstract |
チトクロ-ムP450は、プロトヘムIXをもち、その一酸化炭素複合体のソ-レ-帯を450nm付近に有する一原子酸素添加酵素の総称である。この酵素の触媒反応により分子状酸素の一原子は水に還元され残り一原子は基質である有機化合物に添加(水酸化)される。この時二電子と二個のプロトンが必要である。細菌のカンファ-水酸化酵素であるチトクロ-ムP450camの結晶構造が最近明らかになり(Poulos et al.(1987)J.Mol.Biol.)、このタンパク質が酸素結合部位にポケット状の構造(酸素ポケット)を持つことが判った。ポケットを構成するアミノ酸の配列が各チトクロ-ムP450間でよく保存されていること、他のヘムタンパクにはポケットは認められないことから、これはチトクロ-ムP450にのみ見られるユニ-クな構造と推定された。しかしこの構造と機能、特にO_-O結合開裂反応との相関は不明である。本研究ではチトクロ-ムP450camの触媒作用と酸素ポケットの相関を明らかにすることを目的とする。この目的を達成するためにsiteーdirected mutagenesisを利用し酸素ポケットを構成するアミノ酸(Gly-Gly-Val-Asp-Thr-Val)の置換を行なった。大腸菌を用い変異酵素を合成させ精製した標品の構造と機能を検討した結果以下の知見を得た。 (1)ThrをAla、Val、Serに置換した結果、OH_-基がO_-O結合の開裂反応に必須であることが明らかになり既に報告した。本年度はThrをPro,Gly、Cys、Asnに置換した結果、Asnのみが顕著なカンフア-水酸化を示しNH2_-基がOH_-基とほぼ同様な機能を果たしていると結論された。この結果はThrのOH_-基が水酸化反応におけるプロトン供与体であることを支持している。(2)AspをAsn、Gly、Ala、Gluに置換した結果、この位置にAspがないと酸素消費速度が激減するが、消費された酸素は効率よくカンフア-水酸化に使われることが判明した。酸素消費速度の減少は酸素化型反応中間体に電子が渡る速度が遅くなることによると結論された。(3)赤外分光法、共鳴ラマン散乱法でアミノ酸置換の及ぼす構造への効果を詳しく検討した結果、各置換による微小な構造変化は認められるものの酸素ポケットは存在していると結論された。 上述のように本年度においては、ふたつのアミノ酸残基が水酸化反応にとってそれぞれ重要な役割を果たしていることが明らかになった(第63回日本生化学会(大阪)、第8回Microsome and Drug Oxidation (Stochholm)、International Symmposium on Oxygenase and Oxygen Activation(京都)等で発表))。しかしこれらアミノ酸残基がどのようなメカニズムでそれぞれの機能を遂行しているのかは依然として謎であり、次年度ではこの問題の解明に努めるとともに、酸素ポケットを構成する他のアミノ酸残基の役割も検討したい。
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