Research Abstract |
授業成果の認知と授業過程での認知との関連を初任者と中堅教師とで検討するため,次の研究の方法をとった。 1.小学校3年生分数の単元をとりあげ,その目標準拠テストを開発する。2.小学校3年生分数の単元をとりあげ,目標分析のもと授業設計を行い,授業を実施し,授業過程での教師の認知を授業終了後に記述してもらう。単元の開始時に事前テスト,単元の途中で形成的テスト,単元終了時に総括テストを実施し,各段階で各児童(テストの出来具合)に対する認知を測定し,分析する。3.授業過程は全時間数,ビデオにより記録し,プロトコ-ルを作成し,教師の授業過程での認知と関連させて分析する。 その結果,1.初任者及び中堅教師とも,事前テストの結果の認知では,過小評価が多く,既に学習している事項の把握がそれほどできていない。授業開始時においては,両者の認知に差はない。2.形成的テストになると,初任者はいくらか児童の学習状態を認知できるが,過大評価が多くなる。一方,中堅教師は過大評価,過小評価が減少し,かなり学習状況を認知できるようになる。3.総括テストになると,中堅教師はかなり高い割合で学習状況を認知できるが,初任者は過大評価がまだ高く,単元終了時も見落としがかなりある。4.授業成果の認知において,授業内容要因と学習要因との間に交互作用状況がみられる,ことが判明した。 今後は,教師の授業認知要因を授業過程記録と関連させて分析するとともに,初任者教師に,授業成果を意識した授業設計,実施,評価を組み込んだ実践を行ってもらい,それを通して授業改善モデルを検討したい。
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