1991 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀ドイツ思想への「秘密結社(フリ-メ-スンなど)」の影響とその意味
Project/Area Number |
02801001
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
田村 一郎 鳴門教育大学, 学校教育学部, 教授 (30047906)
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Keywords | 哲学 / ドイツ観念論 / 秘密結社 / フリ-メ-スンリィ / カント / フィヒテ / 『フリ-メ-スンリィの哲学』 / フェスラ- |
Research Abstract |
18世紀のドイツ思想を研究する上で、「フリ-メ-スン」などの「秘密結社」の影響は無視できない重みをもっている。ことに芸術家や思想家の場合強調されなければならないのは、「領邦教会制」の枠を越えようとする、「人間性」なり「世界市民性」の主張への共感である。こうした視点からこれまで、4年前海外留研の際に集めた資料などをもとに、ヨ-ロッパでの、ことにそれぞれの伝承や隠れた主張を重んずる「秘儀結社」の性格や、それらの思想的影響の概要をたどってきた。 さらに個々の思想での意味をたどるため、まずカントと当時の「秘儀結社」のかかわりから手を染めた。カントは生涯どの「結社」にも属そうとはしなかったが、忌避理由を探ることから「結社」のその時代にもっていた思想的意味を理解できる。とくに注目したいのは、ドイツでは「神秘的」傾向と「合理的」傾向が、「結社」間あるいは「結社」内の大きな対立点となっていたことである。カントもこうした流れの外に立てなかったことは、合理的・啓蒙的側の牙城であった『ベルリン月報』に15篇からの論文を寄せ、ヤコ-ビ、シュロッサ-の神秘的な「感情哲学」への批判を重ねていることからも明らかである。 平成2年度までこうした研究に続いて、3年度はフィヒテと「結社」のかかわりに歩を進めた。若くしてフリ-メスンとなったフィヒテは、ベルリン移住後のロッヂでの講演をもとにした『コンスタントへの手紙ーフリ-メ-スンリィの哲学』という論稿を残している。今回はこれまでほとんど顧みられなかったこの文献を取上げ、その16篇の手紙の一つ一つを検討してみた。次回は、フィヒテばかりでなくレッシングやヘルダ-がなぜ「フリ-メ-スンリ=の理想化」にこだわり続けたのかを深めることで、その時代的意味を探ってみたい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 田村 一郎: "ドイツ観念論と「秘密結社」(その5)ーフィヒテの場合(I)ー" 鳴門教育大学研究紀要(人文・社会科学編). 6. 95-116 (1992)
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[Publications] 田村 一郎: "「自律」への不安ー18世紀ドイツ思想と「秘密結社」ー(上)" 多賀出版株式会社, 300 (1993)