1990 Fiscal Year Annual Research Report
魏晋南北朝期の地理思想の思想史的研究ー「水経注」を中心としてー
Project/Area Number |
02801003
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
薄井 俊二 埼玉大学, 教育学部, 助教授 (90185009)
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Keywords | 魏晋南北朝 / 「水経注」 / 地理思想 / 地理的世界観 |
Research Abstract |
北魏の〓道元の「水経注」は、古地理書として長い間研究の対象とされてきたが、この資料自体の性格を論じた研究はほとんどないといってよい。本研究はこの「水経注」に盛られている地理思想・地理的世界観を明らかにし、それを思想史全体の中に位置づけて、その性格・思想史的意味を探ることを目的としている。本年度は、主として資料蒐集と研究方法の検討を行なった。資料蒐集の点では、「水経注」本文に関しては楊守敬「水経注疏」の二つの版本、王国維「水経注校」、静嘉堂蔵「水経注写本」の複写等、関連資料として楊守敬「水経注図」、正史等を入手した。十分とは言い難いが、「水経注」研究の為の基礎資料をかなり揃えることができた。研究方法の点では、地理を扱う上で参考となる欧米近代地理学の成果を吸収すべく努めた。具体的には国際地図学会、日本地理学会等への参加、東洋科学史研究の一大成果であるJ・ニ-ダムの研究資料の入手等であり、これらにより研究方法を定める上で重大な示唆を受けた。こうした作業を進めつつ、「水経注」本文の検討、鄭道坤のそれを中心とする「水経注研究史」の検討を行なった。本年度行なったこうした研究の成果としては、上記の研究目的を達成するために今後行なうべき具体的課題が明らかになったことがある。その一つは「水経注」と他の地理書との比較検討である。特に正史地理志との関連、「水経注」後の地理書への影響が重要である。つまり「水経注」と当代更に後世の地理書との関わり方を明らかにすることである。今一つは作者である〓道元を中心に、北魏から北朝にかけての思想・政治状況を明らかにし、それらと「水経注」との関係を明らかにすることである。今後はこうした二つの具体的課題に沿って研究を進め、公開の準備が整った段階でその成果を公けにする予定である。
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