1990 Fiscal Year Annual Research Report
老齢期における心理・社会的ストレスの行動・内分泌学的基礎研究
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02801021
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
小山 高正 川村学園女子大学, 文学部, 講師 (20143703)
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Keywords | 老齢期 / カニクイザル / 心理的ストレス / 社会的ストレス / 行動・内分泌・免疫学的反応 / 新奇刺激 / 個体差 |
Research Abstract |
本研究の中心的テ-マは、社会的に孤立する傾向をもつ老齢ザルの社会的ストレス、すなわち未知個体との出会い、に対する行動・内分泌・免疫学的反応を調査することである。若齢個体16頭の出会せによる社会的ストレス場面の行動観察より、血中コ-チゾル濃度の変化と抑うつ行動が(16頭中5頭)、また同じく血中コ-テゾルと攻撃行動が(16頭中3頭)それぞれ高い正の相関を示した。さらにU5、CD16ポジティブなどのリンパ球サブセットの変化と抑うつ行動、恐れ、活動性などの行動との間に高い相関を示した個体が同頭数みられた。しかし、中には負の相関を示す個体もみられ、コ-テゾルでみられたようなきれいな分類はされなかった。一方、これらの成果は、心理的ストレスに対する生体系の反応にはかなりの個体差が認められることを示している。つまり、社会的ストレスに対する反応傾向をみるにあたっては、心理的ストレス全般に対する反応の個体差を尺度化する必要がある。そこで、(1)暗室24時間隔離という心理・物理的ストレスに対する内分泌的反応と、(2)新奇刺激を報酬とした学習場面による新奇事態への心理・行動学的反応を個別に測定した。(1)についてはまたコ-テゾル等の内分泌学的指標の測定がすんでいないので考察はできないが、あまり年齢的な影響を受けないようであった。(2)に関しては、10歳以下の若い個体に比べ、20歳を超える個体は学習課題にのりにくく、また静止画とリズム音だけの強化事態での反応は急速に減衰することが明らかになったことから、老齢個体の新奇場面への適応は全般的に劣ることが予想される。次年度は、他固体と出会せによる社会的ストレスに対する老齢個体の反応について分析を行なうことになっている。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 小山 高正: "母子分離にともなう子どもの心理的ストレスを測定する実験について" 川村学園女子大学研究紀要. 2. 195-210 (1991)
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[Publications] 小山 高正: "生体システムにおけるストレス情報の伝達機構" 早稲田大学社会科学討究. 36(3). 1-19 (1991)
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[Publications] Koyama,T.,Terao,K.,& Sackett,G.P.: "Depressive behavior and serum cortisol of Macaca fascicularis after maternal separation and housing with a “nurse"." Journal of Primatology Research (『霊長類研究』). 7(1). (1991)
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[Publications] Koyama,T.& Terao,K.: "Psychological stress of maternal separation in cynomolgus monkeys I:Effects of housing with a nurse female." Current Progress of Primatolgy,eds. Nishida,Itoigawa,and Sackett.(1992)
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[Publications] Terao,K.,Murayama,Y.,& Koyama,T.: "Psychological stress of maternal separation in cynomolgus monkeys II:Effects on natural killer cells." Current Progress of Primatology,eds.Nishida,Itoigawa,and Sackett.(1992)