1991 Fiscal Year Annual Research Report
老齢期における心理・社会的ストレスの行動・内分泌学的基礎研究
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02801021
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Research Institution | Kawamura Gakuen Woman's University |
Principal Investigator |
小山 高正 川村学園女子大学, 文学部, 講師 (20143703)
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Keywords | 老齢期 / 心理的ストレス / 社会的ストレス / 行動学 / 内分泌 / 新奇刺激 / 個体差 / カニクイザル |
Research Abstract |
本研究のテ-マは老齢ザルの心理・社会的ストレスに対する行動・生理・免疫学的反応の特徴を彼らの個体性を加味しながら解析しようとするものである。以下のことが明らかになった。 (1)20歳以上の老齢ザルは10歳以下の若齢個体に比べ、オペラント学習課題にのりにくいし、餌の強化がなくなるとより急速に課題に対する興味を失う。しかしながら、周囲の環境に対する探索的行動には老若間の差はなく、むしろ若齢個体の方が自閉的な常同行動を頻発し課題の遂行が妨げられることが多かった。一方、老齢個体が学習課題にのりにくいのは、彼らの行動が単一的で、探索に用いられる行動レパ-トリ-の狭さに起因するのではないかと考えられた。 (2)暗室に24時間隔離し、30分に3分間80デシベルのFM雑音とストロボ光に暴露すると、24時間後老齢ザルは血中コ-ツゾルレベルの上昇が認められたが、若齢では個体差が見られた。アドレナリンとノルアドレナリンの2種のカテコ-ルアミノは、いずれの個体も拘束直後に急激に増加し、以後下がるパタ-ンをとることがわかったため、今回の装置では受けたストレスを測定して個体差を検討することはできなかった。しかし、物理的ストレスの指標としては注目すべきものであることがわかった。 (3)未知個体との出会いと同居は若齢個体にはコ-チゾルの上昇と不安行動の増加をもたらし心理的ストレスとなっていることが推測されたが、老齢ではそれが見られなかった。しかし、同居期間が進むと若齢の方がやや優位となり、老齢にもステレオ行動や恐れ・回避の傾向が現れた。しかし、老若の組み合せでは親和的な関係にはなかなか至らなかった。行動と内分泌との相関は、有意な相関を示したものもあったが母子分離の時のように抑欝と攻撃に限定はされなかった。
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[Publications] Koyama,T.&Terao,K.: "Psychological stress of maternal sepration in cynomolgus monkeys I: Effects of housing with a nurse female." Current Progress of Primatology,eds.Nishida,Itoigawa,and Sackett. (1992)
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[Publications] Terao,K.,Murayama,Y.,&Koyama,T.: "Psychological stress of maternal separation in cynomolgus monkeys II:Effects on natural killer cells." Current Progress of Primatology,eds.Nishida,Itogawa,and Sackett. (1992)
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[Publications] 岡野 恒也,藤井 尚教,小山 高正: "『心理学事始』" (株)ソフィア, 174 (1991)
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[Publications] 岡野 恒也(編): "『比較発達心理学』" (株)ソフィア, 300 (1992)