1992 Fiscal Year Annual Research Report
ペスタロッチの学校観、教師観の変容過程の分析的研究
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02801037
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Research Institution | CHUO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
長尾 十三二 中央大学, 文学部, 教授 (90015412)
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Keywords | ペスタロッチ / イヴェルドン / メトーデ |
Research Abstract |
(1)ペスタロッチは、その初期においては、学校の社会的役割についての期待を表明していた。ただしそれはボンナル村のような、彼の期待する理想的社会における学校や教師への役割期待である。 ただし彼は、〓〓の学校や教師に対しては、よく知られているように厳しい批判を加えている。とりわけ言語本位の教授活動への批判は徹底的といってもよい。これは一般に認められている通りである。 (2)イヴェルドンにおける学校経営者としてのペスタロッチには、それまでとは異なる学校や教師への期待が生まれている。つまりそれは「メトーデ」の実験とその成果に対する期待である。 そのかわり、学校の社会的役割に対する期待は、2の時期には影をひそめてしまう。イヴェルドンの学校は、地域社会に根ざす学校とはいえないからである。 (3)ところでメトーデは、能率を指向する。メトーデに対する上層社会の期待は、まさにこの点にかかっていた。しかしながら、貧民の道徳的向上までメトーデに期待することはできない。 メトーデによる学力の向上だけが目的であるなら、イヴェルドン学園は成功を収めたといってよい。しかし、ペスタロッチは、道徳・宗教教育へのこだわりを捨てることができなかった。とりわけ、貧民教育についてそうであった。 (4)その結果、イヴェルドン学園において、能率主義指向のシュミットと、反能率主義のニーデラーの対立は決定的となり、収拾がつかないままに破局への道をたどることになった。
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