1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02804021
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山崎 正利 金沢大学, 理学部, 教授 (00019449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 敏夫 金沢大学, 理学部, 講師 (50184320)
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Keywords | ブラウン運動 / 熱揺動 / エネルギ-変換 / 筋肉 / アクチンフィラメント |
Research Abstract |
溶液中にある長い棒状高分子が一次元のブラウン運動をするとき、その長軸のプラス方向の溶媒に対する摩擦係数がマイナスのそれより小さい場合、平均としてプラス方向に運動していくように直感的に思われる。マクロな世界では、摩擦係数の差のためにランダムな力によって方向性のある運動が実際に起こる。ミクロな世界でもこのようなことが起こり得るかどうかを調べる目的で実験及び理論的考察を行って来た。棒状高分子として、アクチン分子の線形重合体であるアクチンフィラメントがミオシンのサブフラグメント(Sー1)と結合したものを用いた。Sー1はアクチンの長軸に対し約45度に結合するので、これは非対象な構造をもつ。長軸方向の一次元運動を実現するために、溶媒にメチルセルロ-スを加えた。アクチンは蛍光染色され、蛍光顕微鏡下で観察された。アクチンフィラメントの極性を知るために、そのP端側とB端側の約半分づつを異なる蛍光色素で染色するか、もしくは、ひとつの蛍光色素で染色度を変えて染色した。以上の実験系の調製は成功し、Sー1・アクチンフィラメントのブラウン運動の様子がその極性と運動の向きとの関係も含めて観察された。確かにほぼ一次元的なブラウン運動が起こる事が確認された。しかしながら、その一次元内での向きの優位性は実験精度内でいまのところ見られない。アクチンフィラメントが全長にわたって対物レンズの焦点面内に観察の始めからあることが稀にしかないこと、またアクチンフィラメントが柔らかくその端の部分が対物レンズの焦点面からずれて行ってしまうことにより、フィラメントの重心位置の測定に誤差が生じてしまった。すなわち、全体の長さが見かけ上揺らいでしまって、ブラウン運動による真の重心位置の変化を正しく評価することが困難であった。フィラメントを硬くできればこの困難を一部克服できるかもしれない。理論的考察はまだ十分でない。
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