1991 Fiscal Year Annual Research Report
液一液2相分離を伴う蛋白質の会合体形成:弾性線維蛋白質合体の構造、物性、機能
Project/Area Number |
02804031
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐原 梢 九州大学, 理学部, 助手 (90080564)
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Keywords | 弾性線維蛋白質 / エラスチン / 液ー液2相分離 / コアセルベ-ション / 原始細胞モデル / 細胞外マトリックス / 動脈硬化 / 蛋白質液体膜 |
Research Abstract |
1.はじめにー研究目的及び研究費補助金の使途ーーーー弾性線維蛋白質エラスチン関連ポリペプチドを用い、特異な相分離挙動、カルシュウムイオンとの選択的相互作用について様々な手法で詳細に検討し、生合成過程との対応、生体内石灰化過程との関連、更に、原始細胞モデルや生体弾性材料としての展開について考察した。研究費補助金はペプチド合成試薬、NMR測定管等の消耗品費に充当した。 2.今年度中に得た具体的成果並びに途中経過についてーーーー(1)液一液2相分離過程の詳細と共存イオンの影響の検討:エラスチンペプチドの最大の特徴である温度依存性コアセルベ-ションについて、牛項靭帯由来のαーエラスチンを用いて種々の測定を行った。会合体形成初期過程に対し静的及び動的光散乱測定法を適用し、2相共存線とスピノ-ダル線を特定した。αーエラスチンー水系の相挙動に対する各種金属イオンの影響についても系統的な測定を行った。(2)弾性線維蛋白質会合体とカルシュウムイオンの選択特異的相互作用:エラスチンコウセルベ-トとカルシュウムイオンの特異的相互作用の分子機構の解明は、弾性発現機構そのものや、動脈硬化発症機構と関連する重要な研究課題である。エラスチンコアセルベ-ト中のイオン輸送、エラスチンモデルペプチドを用いたNMR測定等から、カルシュウムイオンに対する選択的相互作用に関する多くの知見が得られた。(3)その他、弾性線維蛋白質会合体の構造、物性、機能に関連して:生合成過程との関連や原始細胞モデルとしての有効性を示す銅イオン共存下でのコアセルベ-ト液摘安定化等、興味ある現象を見いだした。 3.今年度の研究経過の反省と今後の計画及び展望についてーーーー会合体形成過程に対する、細胞外領域での生合成に対応する空間的制約の効果、水の状態と疎水性相互作用について更に検討の必要がある。
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[Publications] 岡元 孝二: "Role of Pentapeputide Repeating Sequence of Elastin in Coacervation and Calcium Ion Transport." Peptide Chemistry 1990,Protein Research Foundation. 193-198 (1991)
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[Publications] 岡元 孝二: "弾性線維マトリックスの構造、物性、機能に基づく新規生体機能材料に関する研究:人工血管用バイオエラスチック材料" 高分子論文集:生体機能材料特集号. 48(5). 303-309 (1991)
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[Publications] 甲斐原 梢: "弾性線維マトリックスの構造、物性、機能に基づく新規生体機能材料に関する研究:コアセルベ-ト特性に基づく生体材料" 高分子論文集:生体機能材料特集号. 48(5). 311-317 (1991)
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[Publications] 宮川 賢治: "Observation of Critical Behaviors in an Elastomeric Protein‐Water System." J.Phys.Soc.Jpn.60(5). 1468-1471 (1991)
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[Publications] 岡元 孝二: "Elastin Peptides:Mechanisms of Self‐Assembly and Specific Interaction with Metal Ions." Peptide Chemistry 1991,Protein Research Foundation.
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[Publications] 甲斐原 梢: "α‐Elastin Coacervate as a Protein Liquid Membrane:Effect of pH on Transmembrane Potential Responses." Biopolymers.
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[Publications] 小倉・吉川 編,岡元 孝二: "エラスチンの自己集合組識化およびイオンとの相互作用‐ペンタペプチド繰り返し配列の役割‐磁気共鳴と医学" 日本医学館,
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[Publications] 大山 編,岡元 孝二: "エラスチンの生化学、生物物理学弾性線維‐病態生理と臨床‐" 共立出版,