1991 Fiscal Year Annual Research Report
水素結合構造と連結するπ電子系を利用した機能性固体設計
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02804032
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
稲辺 保 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (20168412)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三谷 洋興 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (50010939)
丸山 有成 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (40013479)
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Keywords | 分子内水素結合 / 電荷移動錯体 / プロトンの運動 / 分子間水素結合 |
Research Abstract |
1.分子内水素結合系としては前年度と同様サリチリデンアニリン誘導体について研究を進めた。単一成分結晶について、固体のプロトンNMRの緩和時間の測定により、N・・・HーO水素結合中でのプロトンのダイナミクスをこの種の化合物では初めて調べた(共同研究:阪大理・武田 定氏)。その結果、π電子系を通した分子内の相互作用によりプロトンの運動に差が出ること、化学修飾による水素結合構造の微妙な変化にプロトンの運動が非常に敏感であること、低温のプロトンの運動でのトンネル効果の可能性や、分子間でのプロトン位置の位相が交代することによるソリトンの可能性を示唆する全く新しいデ-タが得られてきている。この系に電気伝導性を付与し、プロトンの運動と伝導電子の運動を結合させ新しい機能性物質を作り出すことを目的として、多種の誘導体を電子供与体とする電荷移動錯体を作り出したが、理想的な高伝導性錯体単結晶はまだできていない。しかし、粉末状態で高伝導性のものは本研究でいくつか見つかっている。 2.分子間水素結合系として、芳香族アミンを電子供与体として、水素結合形成が期待される受容体、TCNQ類、クロラニル、ブロマニル等との電荷移動錯体を対象とした。特に、ジアミノピレンーTCNQはこの種の電荷移動錯体としては唯一、分離積層型の構造をとることがわかり、伝導特性、光学物性、磁気物性を集中的に調べた。この錯体は室温で高伝導性を示すが、温度変化は半導体的で、異常に大きな活性化エネルギ-を広い温度範囲で持つ。錯体中での構成分子間の電荷移動度はかなり1に近いとみられるが、光学的に調べると赤外領域にも電子吸収帯が存在していることから、なんらかの形で電荷担体が存在しており、大きな活性化エネルギ-はこの電荷担体と格子系との相互作用によるものと思われる。
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[Publications] T.Inabe: "Proton Transfer in N-Salicylideneanilines.An Approach to Controlling the Charge Transport in Molecuar Materials" New Journal of Chemistry. 15. 129-136 (1991)
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[Publications] S.Takeda他: "NMR Study of Proton Dynamics in the NHO Hydrogen Bonds in the Thermochromic Crystals of NーSalicylideneanilines" Chemical Physics Letters. 189. 13-17 (1992)