植物の紫外線耐性からみた垂直分布要因としての紫外線

1990 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 02804054
• Research Institution: Shinshu University
• Principal Investigator: 柴田 治 信州大学, 理学部, 助教授 (60020658)
• Keywords: 紫外線耐性 / 海抜高度 / フラボノイド / アントシアン / PAL

Research Abstract

研究課題遂行の主要機器である光合成酸素・クロロフィル蛍光反応測定装置の購入時期が、諸般の事情から著しく遅れる見通しとなったため、山岳域高所に生育する植物についての蛍光反応測定は時期的に不適当と予想された。そこで、紫外線耐性に生理的に関係するとされ、紫外線除去機能を持つとされるフラボノイド,アントシアン系の色素量について、生育高度との関係を調べた。
紫外線量は海抜高度の増加につれて増加した。この紫外線条件のもとで、垂直的に広く分布するイタドリの色素量は海抜620m,1000m,1400mではほぼ同じであったが、海抜1900mでは増加した。オオバコの色素量はイタドリのほぼ半分であったが、高度的変化はイタドリと同じであった。乗鞍岳の高山帯海抜2700mで、モミジカラマツ群落の1部を萌芽直前に紫外線除去ビニ-ルフィルタ-で敝い、開花までのいくつかの生育期に、色素量,色素生成に関与したphenylalanine ammonialyase(PAL)活性などを測定した。フィルタ-で敝われたモミジカラマツは、成熟期まで萌芳直前の色素量のままで変化しなかった。しかし、被ふくされなかったものは萌芳と同時に増加して、その値が成熟期まで続いた。この色素量変化とPAL活性の間には、必らずしも平行関係はなかった。海抜620mのガラス室内(室外に対する紫外線量比はUVーAが75%,UVーBが20%)で、ほぼ10年間栽培し続けたモミジカラマツの色素量は、移植前の生育高度に応じて、低地から高地へ多くなった。しかし、ガラス室外の自然光にさらした時には、このような違いはみられなくなった。ガラス室内で栽培されたオオバコでも、生育高度による同様の違いがみられた。