1991 Fiscal Year Annual Research Report
植物の紫外線耐性からみた垂直分布要因としての紫外線
Project/Area Number |
02804054
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柴田 治 信州大学, 理学部, 助教授 (60020658)
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Keywords | 紫外線吸収物質 / 紫外線ーB / クロロフィル蛍光 / 生育高度 / 紫外線耐性 |
Research Abstract |
1、白色光のみのグロ-スキャビネット内で、原生育地高度の異なるオオバコの種子を発芽、生育させた幼植物に紫外線(AとB)を照射後に実験に用いた。 〔UVーB吸収物質の検出〕ー葉から塩酸ーメタノ-ル可溶性物質を抽出し、UVーB域の吸光度を測定した。またこれら物質を薄尸クロマトグラフで分離、同定した。吸光度から計算した物質の相対量は、紫外線照射も含めて種々の生育条件の間で、原生育地高度によって違いがなかった。しかし、生育地高度の増加につれて個体間の変異が大きくなった。プランタギンと同定された抽出物中の1成分は、強紫外線を照射した時にのみ、すべての高度のオオバコで検出された。また未同定の1成分は、紫外線照射した時に、これの強弱に関系なくすべての高度のオオバコで検出された。 〔クロフィル蛍光〕ーオオバコ葉のクロロフィル蛍光の変化量は、600m産のものでは生育温度,UV照射に関系なくほぼ同しであったが、高所のものではいずれも対照より有意に大きくなった。蛍光最大値を基準にした蛍光変化率は原生地高度が高いものほど紫外線照射されたもので小さくなり、最大蛍光値が半減する時間は逆に長くなって、高所のものほど紫外線耐性が大であった。 2.野外に生育する成熟植物のクロロフィル蛍光ー野外の異なる高度に生育していた同種の成熟個体で、紫外線照射8時間後の蛍光の減少の割合いは、イタドリでは生育高度と一定の関係がみられなかった。しかし、モミジカラマツでは、生育高度が高くなるにつれて減少の割合いが少なくなり、紫外線耐性が増加した。山地帯下部に生育する5種の草本では、垂直的にもっとも高所まで分布しているイタドリの蛍光減少がもっとも小さかった。ツユクサでは、陽地型の方が陰地型より顕著に小さかったが、亜高山帯の陽地型はさらに小さくなった。
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