1991 Fiscal Year Annual Research Report
ダム湖で植物プランクトン性懸濁態リン濃度と正の関係をもつCaーMg指標の実体
Project/Area Number |
02804055
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
香川 尚徳 愛媛大学, 農学部, 教授 (40003777)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣谷 博史 愛媛大学, 農学部, 助手 (70218858)
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Keywords | ダム湖 / 植物プランクトン / カルシウム・マグネシウム指標 / 懸濁態リン |
Research Abstract |
CaーMg指標とは、筆者らが提示した新しい水質指標であり、溶存態のカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)のモル濃度がlog(Ca/Mg)ー0.5log(Ca+Mg)の形で結合したものである。この指標はリン濃度の低い河川水が連続的に流入するダム湖上流端において、植物プランクトン性懸濁態リン濃度の対数(logPP)と正の相関を示す。 はじめに、石手川ダム湖で1984年以来毎月一度行ってきた現地調査を続行して、特に、1989年以降にダム湖上流端に水面から5mまでの深さで湖水を横断する形で設置した不透水性フェンスがCaーMg指標の有効性に及ぼす影響を検討した。その結果、流入河川水がダム湖の水面近くを流れる3月に淡水赤湖がフェンス上流側で濃縮された場合を除くと、フェンスによる湖水の流動制限はCaーMg指標とlogPPの関係にほとんど影響しなかった。そこで、指標を前半部分log(Ca/Mg)と後半部分ーlog(Ca+Mg)に分割して、さらに流入河川水量の対数(logFLOW)を導入して、logPPを導く重回帰式を求めたところ、CaーMg指標にかえてlog(Ca/Mg」とlogFLOWを用いても有意な関係が認められた。すなわち、CaーMg指標の後半部分に河川水と湖水の混合割合が内在すると推定された。 次に、単細胞緑藻のChlorella vulgaris株を用いて、リン濃度が低くCaーMg指標を異にする4種類の培養液で半連続培養を試みた。その結果、定常状態に相当する時期にCaーMg指標とlogPPとの間に有意な正の相関がみられ、この指標に藻類のリン栄養に対する直接的な作用のあることが確認された。しかし、CaーMG指標のこの機能に指標全体が関与するのが指標の前半部分log(Ca/Mg)のみが関与するのかについては結論がでなかった。 CaーMg指標の実体を解明するためには、今後、指標の後半部分ーlog(Ca+Mg)に生理作用があるか否かを検討しながら、ダム湖上流端の水文環境を反映した数理モデルを構築する必要がある。
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Research Products
(1 results)