Research Abstract |
超硬合金,SKS3,S55C,純チタニウム,HSS(高速度鋼),TiNコ-ティングHSSの各材料へ窒素イオンを注入し,炭素鋼S45C,純アルミニウム,純銅,アクリル樹脂,塩化ビニル樹脂の各被削材について切削力測定試験を行なった。その結果,持続的な切削力低減効果の認められた工具ー被削材の組合せは,S55Cー純アルミニウム,S55Cーアクリル樹脂,純チタニウムー塩化ビニル樹脂,HSSー純銅,TiNコ-ティングHSSーS45Cであった。以上のことから切削力の低減にはFeが重要な役割を演じていることがわかった。純チタニウムの結果は,窒素イオン注入により表面に安定なTiNが生成され切削力(摩擦力)が低下したものと考えられ,以前から確認されているTiを含有する超硬合金やサ-メットへの窒素イオン注入効果を説明するものである。また窒素イオン注入処理されたHSS工具でS45Cを切削した場合,すくい面摩耗が10数%減少することがわかった。窒素イオン注入されたS55C,SKS3,純チタニウム,HSSの表面については,超微小硬度計を用いて深さ方向硬度分布を測定した。その結果HSSで変化がなかったが,それ以外のいずれも注入により硬度の上昇が認められ,工具表面の改質効果が確認できた。 HSSの小径ドリルにNイオン注入処理し,SUS303ステンレス被削材を加工する寿命試験を行った。その結果,加工個数で約40%の増加が認められた。また加工個数100個までは切削力(トルクおよびスラスト)が低下することがわかった。超硬合金の小径ドリルにおいても初期の切削力低下が確認できた。 注入材料表面をSIMS,オ-ジェ電子分光法,XPS等により分析し,工具材料中の注入された窒素の状態を特定することができた。またこれらの結果から,注入工具の強度と劣化についてコンピュ-タによるシミュレ-ション計算を行い,有意義な結果を得た。
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