Research Abstract |
前年度までに得られた無限長杭の理論解に対し,杭頭,杭先端および各層境界における連続条件を数値解析法によって導入することにより,多層地盤中の有限長杭の応力を求める方法まで拡張した。 解析例として4種類の地盤モデルと5階,10階,15階建の建物モデルの組合せについて地震応答解析を行い,上部構造の慣性力と地盤応答の杭応力への影響について分離を試みた。杭は直径1.2mの場所打ちコンクリート杭を,また,建物はある平面形を想定し,階数の増加に応じて5階建20本,10階建40本,15階建60本で支持するものと想定した。固有値解析から,地盤の1次固有周期T_S,は地盤A(0.8秒),B(0.83秒),C(0.76秒),D(1.11秒)であり,建物の1次固有周期T_bは5階建(0.4秒),10階建(0.8秒),15階建(1.2秒)が得られた。さらに上部構造の慣性力がない場合,すなわち地盤の影響のみを抽出できることを想定して0階建(杭のみ1本存在すると仮定)の場合も追加した。 地震応答解析結果からは,杭頭付近では各ケースで著しい差がみられ,上部構造慣性力の影響がかなり大きく含まれるのに対し,下方部ではほとんど差異がなく,地盤の応答が支配的であることが分った。次に,杭の曲げモーメント時刻歴について,地盤振動成分と上部構造慣性力成分への分離を試みた。その結果,上部構造慣性力による曲げモーメントは現行設計法で計算される分布でよく表現できることが判明した。また,地盤振動成分については,剛性が極端に異なる中間層がある場合には,少なくとも地盤の2次固有モードまでは評価する必要があることが分った。最後に,杭の設計用曲げモーメントを求める場合の地盤振動成分と上部購造慣性力成分の合成法について検討した。その結果,地盤と建物の組合せに応じてT_5>T_bのケースでは絶対値和が,T_5=T_bとT_5<T_bのケースでは,2乗和平方が比較的よく対応することが分った。
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