1990 Fiscal Year Annual Research Report
二元機能性錯体触媒によるメタノ-ルのみを原料とする酢酸の一段合成反応
Project/Area Number |
02805101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠田 純雄 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (30092232)
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Keywords | 錯体触媒 / クラスタ- / メタノ-ル / 酢酸 / 酢酸メチル / C_1化学 |
Research Abstract |
目標反応(メタノ-ルのみを原料とする酢酸の一段合成)に対する2種類の触媒[Ru(SnCl_3)_5L]^<3ー>(L=PPh_3,MeCN)の活性をMeNO_2およびMeCN溶媒で検討したところ,再現性のよい最も高い値として65℃・100hにおける触媒タ-ンオ-バ-数が16(触媒:[Ru(SnCl_3)_5PPh_3]^<3ー>,溶媒:MeNO_2)という結果が得られた。なお,酢酸は過剰量存在するメタノ-ルとのエステル化反応により酢酸メチルとなっている。反応中,液相には少量のギ酸メチルが定常的に観測され,場合により痕跡量のホルムアルデヒドジメチルアセタ-ル(メチラ-ル)も検出された。 このことから,反応はメタノ-ル→ホルムアルデヒド(脱水素),ホルムアルデヒド→ギ酸メチル(ティチェンコ型の二量化)の逐次過程で起こるものと推定される。実際,[Ru(SnCl_3)_5PPh_3]^<3ー>はギ酸メチルの酢酸への異性化能をもつことが確認された。この反応の速度に対する遊離PPh_3添加効果を検討したところ,反応はPPh_3配位子の解離を予備平衡とし,生じた空配位座にギ酸メチルが配位するという機構で進行することが示唆された。ソフトなルイス酸であるRu(II)がソフトな塩基であるCーH結合部分と,ハ-ドなルイス酸であるSn(II)がハ-ドな塩基である酸素原子と強い相互作用をもち,基質を配位活性化するとして妥当であり,異核混合クラスタ-である本触媒の二元機能性が裏付けられたといえる。気相生成物については,ほぼ酢酸生成量に見合う量の水素の生成が確認された。なお,この他微量の一酸化炭素,メタン,ニ酸化炭素が検出された。中間生成物であるホルムアルデヒドやギ酸メチルの分解反応が一部併発したものと考えられる。
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