1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02805115
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
林 貞男 信州大学, 繊維学部, 教授 (80021137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 崇 信州大学, 繊維学部, 助手 (40196837)
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Keywords | 高分子ラテックス / ラテックス粒子 / 単分散粒子 / 粒子の結像 / ミクロレンズ |
Research Abstract |
合成高分子ラテックス粒子は数μmまでの大きさである。そのラテックスを、含まれている高分子の軟化温度以下で乾燥すると、粒子は融着せずに球体を保つ。そのために、乾燥物は粒子によって光を乱反射し、外観上は白色に見える。しかし、電子顕微鏡で観察する限りではきれいな球体であり、粒子の結像作用が期待できる。よって、これについて検討中である。 まず、単分散のポリスチレン粒子からなるラテックスを合成し、イオン交換樹脂で精製した後、その希釈溶液をカバ-グラス上に流布して低温で乾燥する。この方法で、粒子を一層に並べた試料を作成した。これを光学顕微鏡のステ-ジに置き、光源上に厚紙を切り抜いた文字を固定し、粒子の結像作用を調べた。視野に見える数千個以上の粒子全てに同じ結像を撮影することに成功した。これは、まさに、世界で最小の光学レンズと言える。さらに、粒子の二層状態での結像作用を調べたが、第一層あるいは第二層に焦点を合わせても、他層の粒子が光を遮断するために、粒子の結像は認められなかった。一方、単分散粒子が一層で密に配列した中に、偶然的に1個の粒子が欠落した部分が観察されることがある。その部分が、粒子がないにもかかわらず、粒子の焦点距離よりも長い焦点距離で結像する興味ある現象も発見した。これについての解明は現在進行中である。 以上のように、球体はたとえミクロな分野であってもマクロな分野と同じくレンズ作用を起こすという結論を得た。このことは、ミクロの分野への新たな研究への指針を与えるだろう。たとえば、昆虫の複眼は約30μmの個眼の約3000個から成り立つ。ラテックス粒子より大きい個眼がレンズとして結像作用を持つことは不思議ではない。昆虫は3000個もの個眼の結像をどのようにして一つの像として捕らえているかはいまだ明かではない。本研究の成果はこのような分野の解明にも応用されつつある。
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Research Products
(2 results)