1990 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト大動脈バリアント内皮細胞(動脈硬化や血管炎の発生・進展に及ぼす影響)
Project/Area Number |
02807041
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Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
徳永 藏 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (40113229)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下釜 達朗 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (50170999)
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Keywords | ヒト血管内皮細胞 / バリアント内皮細胞 / プロスタサイクリン / 動脈硬化 |
Research Abstract |
1.ヒト大動脈からの内皮細胞の分離と年代別の比較 病理解剖時出来るかぎり新鮮な大動脈より内皮細胞培養を行い、出現するバリアント内皮細胞の程度と動脈硬化や加齢との関係を明かにした。バリアント内皮は動脈硬化との関係が深くかつ加齢の影響も受けていることが分かった。実験的に変性LDL、免疫複合体、リンホカイン、ラジカルなどを投与してバリアント内皮細胞を作製することが可能であるが、その数は極めて少数でかつ高濃度の因子が必要である。機序としては隣接細胞の癒合により出現するらしい事が分ってきた。しかし人体内ではこれらの因子は低濃度あることから、これら因子が長期間にわたりお互いに複雑に絡みあって作用して形成されると考えらる。 2.プロスタサイクリン 若年者、中年者、高年者の大動脈より内皮細胞を分離培養し、培養上清中に放出されるプロスタサイクリンをラジオイムノアッセイ法で測定して比較すると、若年者のプロスタサイクリン産生能は他のグル-プに比較して有意に高い。また免疫組織学的にプロスタサイクリンの定性と局在部位を同定する方法を開発した。この方法を用いて各年代の胸部大動脈の免疫染色程度をみると、10ー20代で最も強く染色され、加齢と共に免疫染色程度が減少した。また内皮細胞のみならず肥厚した内膜平滑筋細胞からも少量産生されていることが分った。しかし中膜平滑筋細胞は免疫染色されず殆ど産生能はないと考えた。以上の事から内皮細胞のプロスタサイクリン産生能は加齢と共に減少することが分った。また肥厚した内膜平滑筋細胞は、高齢者の低下した内皮細胞機能の一部をバックアップする役割を有していることが考えられた。
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[Publications] Osamu Tokunaga: "Ageーrelated decline in prostacyclin synthesis by human endothelial cells:Qualitative and quantitative analysis" Am J Pathol,in press. (1991)
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[Publications] 渡辺 昭男: "血管内皮細胞の構造と機能." 病理と臨床. 9. 12-17 (1991)
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[Publications] 徳永 藏: "今月の主題.カラ-グラフ.血管内皮細胞の形態." 臨床検査.34. 1715-1717 (1990)
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[Publications] 徳永 藏: "血管細胞の培養と臨床応用" 日本血栓止血学会誌. 1. 153-158 (1990)
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[Publications] Osamu Tokunaga: "Atherosclerosisーand ageーrelated multinucleated variant endothelial cells in primary culture from human aorta" Am J Pathol. 135. 967-976 (1989)
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[Publications] Osamu Tokunaga: "Atherosclerosis and endothelium;Part II.Properties of aortic endothelial and smooth muscle cells cultured at various ambient pressures" Acta Pathol Jpn. 39. 356-362 (1989)
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[Publications] 徳永 藏: "血管壁細胞の機能とその制御機構" 折茂 肇, 181 (1990)
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[Publications] Teruo Watanabe: "Atherosclerosis II.Recent progress in atherosclerosis research." K.T.Lee,K.Onodera and K.Tanaka, 589 (1990)