1990 Fiscal Year Annual Research Report
弱毒変異株を用いたサイトメガロウイルスの病原性の実験的解析
Project/Area Number |
02807051
|
Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
南嶋 洋一 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (80041284)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久村 恵子 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (50186475)
|
Keywords | マウスサイトメガロウイルス(MCMV) / 弱毒変異株 / 新生マウス / 致死感染 / 腹腔内出血 / 感染巣 / 髄外造血巣 / 臓器内ウイルス増殖 |
Research Abstract |
サイトメガロウイルス(CMV)の感染機構や発症病理を明らかにするため、マウスサイトメガロウイルス(MCMV)ーSmith株(wt)より弱毒変異株(rec21w)を分離した。2x10^4 PFU/mouseのwtは生後2日目の新生マウスに致死感染を起こすが、これに対し同力価のrec21wは致死感染を起こさない。wtとrec21wによって生じた病変を比較することによって、以下のようなことが明らかになった。 1.wt感染マウスでは血性の腹水の貯留と著しい成長障害が見られた。一方、rec21w感染マウスでは腹水の貯留は認められたものの、出血はwtの1/6と軽度であり、成長障害も見られなかった。 2.wt感染マウスの肝臓では、非感染マウスで見られる髄外造血巣が著しく減少しており、多数の感染巣や広範な壊死巣および出血が見られた。一方、rec21w感染マウスの肝臓では感染巣の数はwtの60%であり、壊死巣や出血は見られず、髄外造血巣も減少していなかった。その他の臓器でもrec21wの感染による障害はwtによるものに比較すると軽微であった。 3.wt感染マウスとrec21w感染マウスの臓器内感染性ウイルス量は同等であった。この結果から、wtとrec21wの感染における臨床病理学的な差がウイルスの増殖能の違いによらないことが明らかとなった。 4.MCMV初期抗原に対するモノクロ-ナル抗体によって肝臓の実質細胞とクッパ-細胞が感染していることがわかった。rec21wの弱毒性に関する細胞レベルでの検討は検在進行中である。 rec21wは臓器内でwt並みに増殖するにもかかわらず臓器に障害を与える能力が低下していた。MCMVが致死感染を起こすためにはウイルスの増殖も必要であるが、さらにウイルスが産生する組織障害因子が必須であることが示唆された。
|