1990 Fiscal Year Annual Research Report
ディ-ゼル排気黒煙粒子の細胞毒性,形質転換に及ぼすヒドロキシラジカルの役割の解析
Project/Area Number |
02807061
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
嵯峨井 勝 国立環境研究所, 大気影響評価研究チーム, 総合研究官 (80124345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 知子 工業技術院化学技術研究所, 生体機能化学部, 研究員
市瀬 孝道 国立環境研究所, 大気影響評価研究チーム, 主任研究員 (50124334)
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Keywords | ディ-ゼル排気粒子(DEP) / ス-パ-オキシド(O^ー_2) / ヒドロキシラジカル(・OH) / 肺胞マクロファ-ジ / 貪食能 / DNA鎖切断 / 肺水腫 / 血管内皮細胞傷害 |
Research Abstract |
今年度は,ディ-ゼル排気黒煙粒子(DEP)からス-パ-オキシド(O^ー_2)やヒドロキシラジカル(・OH)が生成する条件の検討と細胞毒性に関する検討を行った。 DEPが肺内に吸入されると,肺胞マクロファ-ジ(AMφ)が粒子を貪食し,それによってO^ー_2,H_2O_2を産生することが予想されるので,この点を調べた。AMφはDEPを極めて活発に貪食し,その活性はチモサン貪食の2倍にも達し,5×10^5AMφ/0.5ml当り0.1mgのDEP添加で95%以上のAMφが貪食能を示した。シトクロムC還元法によりO^ー_2産生能を調べたところ,O^ー_2産生はチモサン貪食の場合の約50%の活性を示した。さらに,H_2O_2産生を調べたところ,チモサン貪食の場合の約1/4に相当していることが判明した。 次に,H_2O_2と電子供与体存在下でDEPによる・OH生成条件を検討した。その最適pHは7.0であった。電子供与体としてはビタミンCが極めて高い・OH生成能を示し,次にシステインが有効であった。しかし,GSHは電子供与体としては働かなかった。VCやシステインは肺内にも多量に存在している物質であるので,DEP吸入によって肺内で・OHが生成し,これによって細胞傷害あるいは形質転換(細胞の癌化)が起こる可能性が考えられる。この可能性は,上記の反応系で,著しいDNA単鎖切断が認められたことから支持された。なお,このDNA鎖切断は・OHスカベンジャ-のDMSOや鉄のキレ-ト剤であるデスフェラ-ルなどの添加で効率よく抑制されたことから,この鎖切断は・OHによっており,かっこの・OHはフェントン反応によって生成していることが示唆された。 ディ-ゼル排気粒子(DEP)の細胞毒性は予定を変改して,マウスの気管内投与によって調べた。DEPの1mg気管内投与で100%のマウスが肺水腫で死亡するが,このマウスにあらかじめO^ー_2を異性化する酵素のSODを尾静脈より投与しておくと死亡率は30%以下になった。O^ー_2が血管内皮細胞を傷害していることが示唆された。この詳細について検討中である。
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