1990 Fiscal Year Annual Research Report
半導体新素材、ヒ素・インジウム・アンチモンの生体影響に関する研究
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02807064
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
高橋 啓子 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (90197137)
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Keywords | ヒ素 / インジウム / 半導体新素材 / 急性毒性 / 代謝 / メチル化 / メチルヒ素化合物 / 化学形態 |
Research Abstract |
(目的)インジウムヒ素(InAs)は近年、半導体新素材としての重要性が高くなっているが、需要の増加の一方で、InAsの電子産業界での使用の歴史が浅いため、過去に研究報告がなく、この物質に関する生体影響及び毒性学的な知見は極めて乏しいまま使用が先行している。本研究ではInAsの毒性と代謝の解明を試みた。 (方法)InAs(住友金属鉱山社製、平均体積粒径4.8μm)を蒸留水に懸濁して用いた。急性毒性:皮下投与でのInAsのLD_<50>はICR系雄マウスを用いて算出した。血液および生化学的検査には雄シリアンハムスタ-を一群5匹として用い、InAs1000mg/kg体重を一回皮下投与し、1、3、5、10、30日目に屠殺し、下大静脈より採血した。血液はEDTAー2K(1.2mg/ml)で抗凝固処理し、ただちに血球数、血小板数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値を測定した。血液は血漿分離後、生化学的検査を行なった。代謝・排泄実験:雄のゴ-ルデンハムスタ-を用いて、InAs100mg/kg体重を一回皮下投与し、5日目までは毎日、そして15、30日目の尿、糞便を採取した。尿、糞便中Asは超低温捕集ー還元気化ー原子吸光法により化学形態別に測定した。同様に尿、糞便中のInをICPにより測定してInAsの代謝、排泄パタ-ンを解明した。 (結果)急性毒性:皮下投与でのInAsのLD_<50>は20〜40g/kgの範囲にあり、低毒性であった。InAs投与後のハムスタ-の血液所見はMCHとMCVの値が上昇傾向を示し、血漿の生化学検査値ではLAPとChーEが顕著な減少を示した。代謝と排泄:投与したInAsのうちAsは主に尿中に排泄され、一日の総ヒ素排泄量は投与量の0.05%であった。無機ヒ素、モノメチル化ヒ素、ジメチル化ヒ素の3形態が尿中から検出され、投与されたInAsから溶出した無機ヒ素は主にジメチル化ヒ素に代謝されたことが明らかになった。一方、Inは尿と糞便の両方へ排泄されたが、投与量に対する排泄量の割合は投与5日目までで尿中へ約0.09%であるのに対して、糞便へ約0.13%とやや糞便中への排泄が多かった。
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[Publications] 高橋 啓子: "無機ヒ素のメチル化に関するSーアデノシルメチオニンの効果" 日本衛生学雑誌. 45. 613-618 (1990)
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[Publications] Keiko Takahashi: "Metabolism and excretion of subcutanuously administered indium arsenide in the hamster." Fundamental and Applied Toxicology.