1990 Fiscal Year Annual Research Report
脳アミロイドアンギオパチ-の成因に関する生化学的ならびに分子生物学的研究
Project/Area Number |
02807083
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
柳沢 信夫 信州大学, 医学部, 教授 (00010025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 武 信州大学, 医学部・附属病院, 助手 (50164249)
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Keywords | 脳アミロイドアンギオパチ- / 家族性アミロイドポリニュ-ロパチ- / トランスサイレチン / アミロイド |
Research Abstract |
平成2年度は脳アミロイドアンギオパチ-(CAA)の成因を知る目的で、アミロイド産生機序が比較的よく判っているI型家族性アミロイドポリニュ-ロパチ-(type I FAP)の脳血管におけるアミロイド沈着病変について病理学的ならびに生化学的に検索した。病理組織学的検索を行った対象は長野県出身のtype I FAP10例で、いずれも臨床的には高度な末梢神経ならびに自律神経障害を呈していたが、中枢神経症状は示していなかった。剖検所見ではすべての例でくも膜ならびにくも膜下腔の血管壁を中心に中枢神経内の広範な領域へのアミロイド沈着が観察されたが、脳実質への沈着は見られなかった。またこれらのアミロイドは免疫組織化学的に抗ートランスサイレチン抗体には陽性反応を示したが、対ーβ蛋白ならびに抗ーシスタチンC抗体には反応しなかった。以上の所見よりFAPで見られるトランスサイレチン型CAAは従来知られていない新しいタイプの脳血管アミロイドーシスであると考えられた。そこで別の一剖検例から脳くも膜を剥離し、Glenner & Wongの方法に従いアミロイド線維の分離・精製を試みた。すなわちくも膜のホモジュネ-トから水抽出によりアミロイド綿維を分離し、これらを6M塩酸グアニジンで可溶化。Superose 12 columnで得られた主要ピ-クをトリプシン消化し、各ペプチドをアミノ酸自動分析器により分析した。これにより得られたアミノ酸配列はトランスサイレチンのN末端から30番目のバリンがメチオニンに置換された変異トランスサイレチンであり、このアミロイド蛋白はtype I FAPの全身諸臓器に沈着しているものと一致した。 CAAは種々な疾患でみられる病態であるが、その中で最も頻度が高いのは高齢者で観察されるβ蛋白型CAAである。このβ蛋白型を含むCAAのアミロイド蛋白の由来に関しては従来から血清由来および脳実質由来の二つの仮説が存在するが、未だ実際のアミロイド前駆蛋白は同定されていない。一方type I FAPでは血清中にアミロイド前駆蛋白である変異トランスサイレチンが存在することが知られており、本研究で明らかにされたFAP患者のトランスサイレチン型CAAは脳血管壁へのアミロイド沈着機序を解明する上で有用な疾患モデルとなることが期待される。
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Research Products
(1 results)