Research Abstract |
悪性腫瘍の基底膜内浸潤は,1)腫瘍細胞の基底膜への接着,2)腫瘍細胞由来の酵素による基底膜の破壊,3)転移の標的臓器実質方向への迷入という3つのプロセスに分けられる。われわれは,平成2年度に,ヒト線維肉腫細胞においては,最初のプロセスである基底膜への接着の段階で,基底膜内の糖蛋白であるlamininの4つのアミノ酸配列部位(YIGSR,PDSGR,RGし,IKVAV)およびtype IV collagenに接着することを報告した。また,Modified solid phase radioassayを用いることにより,腫瘍細胞由来のtype IV collagenaseによって基底膜が破壊されることを報告した。 更に,平3年度は,本来,転移りバリヤ-である基底膜の構成々分が,腫瘍細胞の運動性,増殖を促進する側面を持っていることを証明した。これは,1)ヒト線維肉腫細胞,あるいはヒト骨肉腫細胞と再構成基底膜(matrigel),あるいはlamininに暴露させると,in vitroで細胞の増殖を促進させること,chemotaxis効果が見られること,2)再構成基底膜(matrigel)に腫瘍細胞を浮遊させた状態で,nude mouse皮下に移植すると,腫瘍細胞によるtumorigenecityが著明に促進されること,から証明された。以上の事実から,悪性腫瘍の基底膜浸潤は,腫瘍細胞側からの一方的な働きかけによるのではなく,腫瘍細胞と基底膜構成々分の相互反応によって成立するという可能性が示唆された。また,再構成基底膜(matrigel)により,transplantabilityが低い事が問題になっているヌ-ドマウスを用いた制癌剤感受性テスト等,ヌ-ドマウスを用いたヒト腫瘍の研究に,飛躍的な発展がもたらされるかも知れない。
|