1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02807160
|
Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
馬場 俊吉 日本医科大学, 医学部, 助教授 (60089761)
|
Keywords | 聴性脳幹反応(ABR) / 温度眼振反応 / 脳幹機能 |
Research Abstract |
意識障害に対して聴性脳幹反応(ABR)と温度眼振反応の観察を行ない、両反応から脳幹機能の把握を行った。両検査とも意識障害に陥ってから24時間以内に記憶を開始し、ABR測定後直ちに温度眼振検査を施行した。ABR,温度眼振ともなるべく経時的に観察を行った。軽度意識障害者では温度眼振は全例緩徐相,急速相が認められた。ABRではIーV波間潜時4.2msec以内のものがほとんどで潜時の延長が認められても4.4msecと軽度であった。意識障害の程度が強くなるにしたがい温度眼振反応では急速相が消失し緩徐な芽球運動となり,次いで緩徐相が消失し眼球の偏倚のみとなり,ついには全く冷水による反応は認められなくなった。ABRではIーV波間潜時が正常に認められるものから,潜時の延長,V波の消失,I波のみ,無反応と様々な反応が認められた。両反応を経時的に観察すると,温度眼振反応では無反応であったものが,意識状態の回復と共に正常反応に回復する例が認められた。しかし,ABRでは波の消失や無反応と悪化した状態から波形が回復する例は外められなかった。IーV波間潜時が正常範囲内に有っても,経時的に潜時の延長や波形が消失する例の予後は不良であった。逆に,IーV波間潜時が4.6msec以上と延長していても,終始波形が保たれていた例や,募時が正常範囲以内に回復した例での予後は良好であった。このことは温度眼振反応とABRを比較すると,温度眼振反応は大ざっぱに脳幹機能を把握することができるが,脳幹の微細な変化を観察するにはABRすぐれており直接脳幹の機能を反応しているものと考えられた。
|