1990 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠中に分泌され卵母細胞の成熟を抑制するタンパク質因子の検索
Project/Area Number |
02808028
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
榊原 隆三 長崎大学, 薬学部, 助教授 (30127229)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 正恒 長崎大学, 薬学部, 教授 (90038274)
|
Keywords | マウス卵母細胞 / 卵母細胞成熟 / 非分泌型リボヌクレア-ゼ / オピオイドペプチド / 妊婦尿ペプチド / 尿ペプチド |
Research Abstract |
哺乳類の卵母細胞は通常、卵胞中ではその減数分裂が停止された状態で存在するが、卵胞から分離し培養するとエネルギ-基質のみの培養液中でも減数分裂の再開始を行う。このことから卵胞液中に卵母細胞成熟抑制因子の存在が推察される。一方、妊娠時はその間持続的に卵母細胞の成熟は抑制された状態(卵胞閉鎖状態も含めて)にあり、この様な因子が卵胞液中に常時存在し、血中及び尿中にも分泌及び排泄されている可能性がある。そこで、我々は妊婦尿を材料としてマウス卵母細胞成熟抑制因子の検索を行いこれまでに以下の成績を得た。 (1)妊婦尿材料として、市販妊婦尿濃縮物を用いて、マウス卵母細胞成熟抑制因子の検索を行った。すなわち、マウス卵母細胞を培養し、自然に誘起される卵核胞の崩壊(GVBD)及び続いて起こる極体の形成(PBF)を抑制する因子を妊婦尿濃縮物から分離することを試みた。妊婦尿濃縮物をゲル濾過及び逆相クロマトグラフィ-により分画した結果、PBF抑制因子として一つのタンパク質が精製された。このタンパク質は、そのN末端アミノ酸配列から、従来報告されているものと異なる前駆体構造をもつ非分泌型リボヌクレア-ゼ様タンパク質であることが推定された。 (2)妊婦尿に存在し卵母細胞成熟抑制作用をもつ可能性のある因子を広くスクリ-ニングするために、新鮮な妊婦尿を材料に用いた。すなわち、逆相樹脂に吸着する尿成分をゲル濾過により分画し、各画分の培養卵母細胞のGVBDに対する影響を調べた結果、分子量10,000以下の画分(Dー4)に顕著なGVBD抑制活性が認められた。Dー4は、その活性がプロテア-ゼ処理によりなくなったことから、ペプチド性因子を含むと考えられる。また、ナロキソンにより作用が部分的に拮抗されたことから、Dー4にはオピオイドペプチドの存在が示唆された。
|